2013年7月15日(月)
スペイン政権 窮地
首相先頭に賄賂疑惑
【パリ=浅田信幸】スペインのラホイ政権が不正資金疑惑で窮地に陥っています。1990年代から長年にわたり建設業界からの賄賂を党幹部の間で分け合っていた疑いで、ラホイ首相の名前も早くから浮上。予審捜査で収監中の与党・国民党の元会計責任者が真相を語り始めたことで、これまでの「全面否定」の根拠も崩れつつあります。
疑惑が最初に報じられたのは半年前の1月中旬。同月末にはラホイ首相にも賄賂の一部が定期的に手渡されていたと報じられ、緊縮政策とともに腐敗政治に対する国民の怒りが広がりました。
事態が急転したのは6月末、国民党のルイス・バルセナス元会計責任者に対する予審捜査を進めていた検察当局が、海外逃亡の恐れのため同氏の収監を決定したことから。会計を担当した28年間にスイスの銀行口座にため込んだ4800万ユーロ(62億円強)の不明瞭な出所および資金洗浄(マネーロンダリング)と脱税の容疑です。
同氏は収監される前に有力紙の一つムンドのラミレス編集長と会談し、賄賂を「追加報酬」として党幹部に配った証拠となる手書きの書類を提供したと報じられています。スキャンダルの中心人物となった当人に、党からの支援がなく、告白に傾いたのだろうといわれます。
この会談についてラミレス編集長は今月7日付の同紙上で、バルセナス氏が、少なくとも過去20年間、国民党が不法な資金を得ていたこと、企業から献金を「現金で」受け、企業は見返りに公共事業の落札や契約を手に入れていたことを説明したと書きました。
続けて同紙9日付はラホイ首相が、アスナール政権の閣僚であった97〜99年に、現金で「不法報酬」を受け取っていたことを示す文書のファクシミリを1面に掲載しました。
新たな暴露に政権は大揺れ。説明を求める世論が巻き起こる中、与党内では、ファクシミリは原物(オリジナル)ではないとの反論もあると伝えられますが、首相本人は沈黙を保ったままです。
15日には検察によるバルセナス氏の事情聴取が予定されており、ここで同氏がメディアの報じる内容を事実と認めるかどうかが、政権の行方を大きく左右しそうです。