2013年7月14日(日)
首相「安上がり」と言うが…
原発こそ究極の高コスト
安倍晋三首相は、原発を「安上がり」であるかのように描いて、「安全と判断されたものは再稼働していく」と明言しています。原発は「安上がり」か、検証します。
(佐久間亮)
隠された国民負担
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歴代政府はこれまで、原発の発電費用が他の電力より安上がりだという試算をたびたび発表し、それを根拠に原発建設を進めてきました。例えば、2004年には1キロワット時あたり5・3円という数字を出しています。この試算は、根拠となるデータが公表されていないうえ、いくつもの国民負担を隠しています。
まず、国の税金で原発を支えている費用が含まれていません。原発の研究費用や立地自治体への交付金として、11年度には3193億円が使われています(政府のコスト等検証委員会調べ)。
コスト等検証委員会の委員を務めた立命館大学の大島堅一教授は、電力各社が発表している資料をもとに、原発の発電費用を1キロワット時あたり8・53円と試算。さらに、電源特別会計のおよそ3分の2、一般会計のエネルギー対策費の97%が原発に使われてきたとし、税金による「補助金」を加えた原発の真の発電費用は1キロワット時あたり10・25円と試算しています。大事故が起きない場合でも火力や水力と比べ「最も高い」(大島教授)電力です。
さらに、使用済み核燃料の処分費用や、廃炉費用もばくだいです。政府は、再処理を含めた核燃料サイクルの総事業費を約19兆円としていますが、それですむ保証はありません。43兆円以上になるとの指摘もあります。
核燃料サイクルは破たんが明らかであり、そこに固執し続ければ、費用は際限なく膨らみます。放射性廃棄物の処分も技術が確立されておらず、実際にいくらかかるか全く見通しが立っていません。
超巨額の事故費用
福島事故は、ひとたび原発で過酷事故が起きれば、経済や社会にはかりしれない被害を与えることを明らかにしました。住みなれた土地を奪われた苦しみは、金額では表せない被害を被災者に与えています。原発は安上がりだという議論は、事故によって発生する国民負担を隠しています。
国の原子力委員会は、福島原発事故による損害費用を約6・9兆円と見積もり、そのなかで損害賠償額については約5・9兆円としています。賠償額は5年間でゼロになると想定しています。
しかし、事故による被害が5年間で終わる見通しはありません。被災者にとって、これまで生活してきた環境や文化が奪われるという問題を見ないで、固定資産税の評価額だけで賠償額を算定しているという問題もあります。放射線被ばくによって将来発生する可能性のある健康被害も、算定の対象になっていません。
さらに、放射能の除染にかかる費用も含まれていません。福島県飯舘村が策定した除染計画では、除染と放射性廃棄物の管理に3224億円かかるとしています。福島をはじめ汚染された地域の広さを考えれば、その費用ははかりしれません。
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安易な値上げ許されない
原発推進の側からは、原発が止まっているために火力発電の燃料費用がかかり、それが電気料金を押し上げ、経済や生活を圧迫しているという議論が振りまかれています。値上げがいやなら再稼働をという“脅し”です。
東電の広瀬直己社長は「3期連続の赤字は避けたい」といって新潟県柏崎刈羽原発の再稼働を迫りました。これは国民の安全より、電力会社の経営を優先するものです。
日本共産党の塩川鉄也議員が3月の衆院経済産業委員会で追及したように、日本の天然ガス購入価格は欧米と比べ4〜5倍と異常な高額です。そのツケを電力利用者に回すこと自体が問題です。
購入価格の是正などの努力すら怠り、値上げの脅しで再稼働を迫ることは許されません。
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