2013年7月12日(金)
危険手当不払いなど不当
福島第1事故関連 作業員が初提訴へ
2次下請け 一方的に賃金引き下げ・解雇
仙台地裁
東京電力福島第1原子力発電所の事故収束・廃炉の関連作業員2人が、賃金の一方的な引き下げ、危険手当不払いは不当、解雇無効として宮城県内の2次下請け会社を相手に12日、仙台地方裁判所に賃金など未払い請求訴訟を起こします。
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今回の原発事故の緊急作業などで、危険手当をピンハネされた作業員が未払い賃金を求めて訴訟を起こすのは初めてです。
提訴するのは事故収束・廃炉作業に関連する軽油運搬業務を東電から元請けとして受注した大成建設の2次下請け会社に所属していた男性作業員の2人(いずれも40代)。賃金、危険手当を含む未払い請求額はそれぞれ約1500万円です。
危険物取り扱い資格をもつ2人は2011年7月に、原発作業員(タンクローリー運転手)として、日当2万5000円の条件で2次下請け会社と雇用契約し、それぞれ同月15日、27日から勤務につきました。
2人は、タンクローリーに乗車、福島県いわき市小名浜の油槽所から軽油を同県広野町の事故収束・廃炉作業の前線拠点であるJビレッジに搬送。同所で福島第1原発行きのタンクローリーに軽油を積み替え、同原発構内まで搬送する作業に従事してきました。
2次下請け会社は勤務してまもない2人に対し賃金引き下げを一方的に通告。会社側は2人の抗議を無視して引き下げを強行。是正を求めた2人に12年10月、事実上の解雇を通告してきました。
2人は「莫大(ばくだい)な費用をかけて収束作業を行いながら、わたしたちのように健康被害と引き換えにした労働者の労働条件もごまかし、使い捨てにするのは納得できない。下請けや元請けを管理できない東電にも重大な責任がある」と力を込めました。
解説
使い捨て構造に司法はどう迫る
「危険手当という、本来ならば労働者に渡すべきものが途中で抜かれるという恒常的な実態を改めさせたい」。提訴への思いを語った主任弁護士の言葉です。「レベル7」という世界での原発事故史上でも最悪とされる東電福島第1原発事故後もまかり通る悪へいへの根源的な問いかけがあります。
提訴の直接の相手は2次下請け会社ですが、原告となる作業員の矛先はそれにとどまりません。「(下請けや元請の)金儲けに走る会社を管理できない東電にも重大な責任がある」との告発がそれを示しています。
弁護団による仙台弁護士会を通じた東電、元請、1次下請け会社への危険手当についての照会、それへの回答が原発業界の「使い捨て構造」体質を浮き彫りにしています。
「福島第1原発収束作業として(危険手当は)委託契約費総額にて契約しており、作業員の賃金や手当ては約定していない」(東電資材部長)。元請けの大成建設、1次下請けの回答も右へならえです。まさに「ピンはね」の勧めであり黙認の証しです。司法がこの事実にどう迫るのかが問われています。 (山本眞直)