2013年7月9日(火)
労働規制緩和Q&A (上)
安倍「成長戦略」がねらうもの
企業利益のため労働者を犠牲に / 必要なのは正社員化政策
安倍首相は、参院選挙で「成長戦略」を重要政策にかかげ、なかでも雇用分野は最重要課題です。いったいどう変えようとしているのでしょうか。
Q 検討されている内容は
A 低賃金・雇用不安定化促進
Q 検討されているのは、どのような内容ですか。
A 企業が労働者を犠牲にもうけをより上げるため、「正社員改革」と称して、低賃金・雇用不安定化、長時間ただ働きをすすめる内容です。非正社員の低賃金を改善する均等待遇や、正社員の長時間労働を規制する政策は一つもありません。
(1)企業が雇用責任を負わずにすむ派遣労働を無制限に活用できるよう、規制を撤廃する(2)正社員の賃金切り下げ・解雇を容易にするため、転勤や残業などに応じられないことを理由にした限定正社員の雇用ルールをつくる(3)正社員の長時間ただ働きを可能にするため、労働時間規制の適用除外や裁量労働制を拡大する―などです。
とくに、派遣労働の規制撤廃は、期間制限などについて「根本的な見直し」を年内に具体化するとしており、猶予がありません。他の項目についても、早急に検討を始めるとしています。
Q 派遣法の根本的見直しとは
A 「臨時的・一時的」をなくす
Q 労働者派遣法の「根本的な見直し」とは、どのような内容ですか。
A 労働者派遣法は「常用代替の防止」という考え方を根幹にすえています。“正社員を派遣に置き換えてはいけない。派遣は「臨時的、一時的」な場合にだけ活用できる”というものです。いいかえれば、「臨時」の仕事でないなら、企業は直接雇用しなさいというのが、法の立場です。
規制改革会議の主張は、「常用代替防止」は派遣労働者の保護にはなっていないから、これをなくし、パートや契約社員など他の有期雇用と同じ扱いでいいとしています。
これは非常識な暴論です。派遣が特別に規制されているのは、派遣が本来あるべき働き方ではないからです。正社員だけでなく派遣を含めた労働者全体を守るためです。
派遣労働は他の有期雇用とちがい、実際の使用者(派遣先企業)が、雇用責任を負わずにすむ特殊な形態です。企業は労働力が不要になれば、間に立つ派遣会社との契約を切ればすむので、非常に都合のよい働かせ方となります。労働者にとっては、無権利で不安定な状態を強いられます。
労働力を使う企業が雇用責任を負うというのは、現代社会の当然のルールです。労働者をモノのようにレンタルする働かせ方は、憲法の基本的人権にそぐわず、戦後は罰則付きで禁止されました。
しかし、大企業の製造現場やコンピューター部門に、“請負”名目の派遣が横行していたため、政府は取り締まり強化ではなく追認します。1985年に労働者派遣法を制定し、例外的に認めたのです。以来、財界の強い要求で、派遣対象が拡大されてきました。
規制がなくなれば、派遣は増大の一途をたどることは明白です。労働者の生活は見通しが立たず、社会は不安定化してしまいます。派遣労働の規制強化と正社員化への政策こそ、もとめられています。
Q 派遣労働をどう変える
A 半永久的に活用可能に
Q 具体的に、派遣労働をどのように変えようというのですか。
A 一つは、「業務区別の廃止」です。現行法では、通訳やソフトウエア開発など専門的な26業務について、企業が期間制限なく派遣労働者を使うことができます。それ以外の製造や一般事務などの業務は、原則1年(労組の意見聴取をすれば3年)としています。この区別を廃止するべきだと主張します。
もう一つは、派遣期間の制限は業務による規制をやめ、人を単位に転換すべきだとしています。企業は労働者を代えれば、半永久的に派遣労働を活用できることになります。
これらのねらいは一つです。企業が派遣労働者を制限なく自由に使えるようにするということです。
(つづく)