2013年7月9日(火)
主張
原発再稼働申請
安倍政権と一体の“やらせ”だ
原発を推進する安倍晋三政権が望んでいたとおり、再稼働のジャマにならない新しい「基準」ができ施行されたとたん、電力会社がいっせいに再稼働を申請する―。これを「原子力ムラ」の“やらせ”と呼ばないで、なんと呼べばいいのでしょうか。まさに「ザル」基準への「悪乗り」そのものです。申請を受けた原子力規制委員会が、短期間で再稼働を承認するなど、許されません。参院選で安倍政権と自民・公明の与党にきびしい審判を下し、原発推進の暴走をやめさせることがますます重要です。
国民の命より“金”なのか
再稼働を申請したのは、北海道電力が泊原発の1〜3号機、関西電力が大飯3、4号機と高浜3、4号機、四国電力が伊方3号機、九州電力が川内1、2号機です。九電はさらに玄海原発の3、4号機についても近く再稼働を申請します。東京電力は柏崎刈羽原発の6、7号機について再稼働を申請することをねらっていましたが、地元の新潟県などの同意が得られず、先送りしています。
日本全国で50基ある原発のうち、大飯の2基を除く48基の原発がすべて停止しているのは、2年余り前の東京電力福島第1原発の大事故で、原発の安全性が保障できず、全国どこでも運転に地元の了承が得られなくなったからです。福島の事故はいまだに収束のめどが立たず、原因の究明もできない状態です。事故のくわしい原因がわからないのに、新しい「基準」をつくったからといって、安全が保障されないのは明らかです。
これまでは福島原発のような放射性物質が外部に拡散する過酷事故は起きないとしていました。新「基準」は、過酷事故が起きても放射性物質を薄めるフィルターつきの排気装置などを備えれば、被害は拡大しないとしただけのものです。文字通り新たな「安全神話」そのものです。しかも、福島のような「沸騰水型」と違う「加圧水型」の原発には、その設置そのものを5年間猶予しています。4電力が再稼働を申請したのはすべてその型で、基準を満たしていないことも重大です。
いったい再稼働を申請した電力会社は、自分のところだけは福島のような事故が起きないと言い切れるのか。電力会社が原発の再稼働を求めるのは、停止している原発の代わりに火力発電所などを運転すれば燃料費がかさみ、経営が悪化するというのが理由です。しかし原発が事故を起こせば、会社の存続ができなくなるほどの被害が出るというのは福島で証明ずみです。命より経営を最優先した態度は、絶対に容認できません。
ましてや福島で事故を起こした東京電力が同じ沸騰水型の柏崎刈羽原発についてまで再稼働を申請するなどというのは言語道断です。放射性物質を外部に放出する弁を設置する工事を始めていることにも新潟県などは反発しています。まさに「命より金」の暴挙です。
参院選で原発撤退審判を
問題の根本には、安倍政権が原発への依存を減らしていくという方針さえ撤回し、原発の活用のため、再稼働と輸出を推進していることがあります。政府が原発からの撤退を決断しない限り、電力会社の態度を改めさせることはできません。参院選挙での安倍政権と与党へのきびしい審判こそ、再稼働を阻止していく保障です。