2013年7月6日(土)
主張
ASEAN
前進する平和の地域共同体
アジア・太平洋地域の安全保障をめぐる多国間対話の枠組みとして、東南アジア諸国連合(ASEAN)が主催する東アジア首脳会議やASEAN地域フォーラム(ARF)が存在感を増しています。
ブルネイで開かれた今年のARFには、参加する米日韓中ロなど27カ国すべての外相級代表が出席し、北朝鮮問題や南シナ海の安定などを話し合いました。どの問題も今後とも曲折が予想されます。それだけに、紛争の激化を予防し解決の道筋を見いだすうえで、当事国・関係国が顔を合わせ話し合うこうした機会は重要です。
ARFでの対話を通じ
北朝鮮は5月以後、中国と協議を重ねる一方で、米国に直接対話を迫り、韓国との関係も少しずつ修復しています。弾道ミサイル発射など安保理決議を踏みにじるそれまでの異常な挑発から、姿勢を変えています。しかし、核兵器の放棄は拒否しており、対話の入り口として非核化の具体措置を迫る米国との溝は狭まっていません。
北朝鮮は6カ国協議に復帰し、同協議で自らが合意した核兵器の放棄を誠実に進めるべきです。ARFでは「ほとんどの国が北朝鮮に国連安保理諸決議と2005年の6カ国協議合意による義務の順守を促し」(議長声明)、「朝鮮半島の平和的な非核化への支持」を強調しました。北朝鮮と関係を持つ国々も参加したARFで非核化が再確認されたことは、北朝鮮問題のあるべき解決の方向を明確に示したものです。
南シナ海の島々の領有や海域の管轄をめぐる東南アジアの国々と中国との対立で、ASEANは2002年に中国と署名した「南シナ海行動宣言」に法的拘束力をもたせる「南シナ海行動規範」の策定を求めています。今回のARFでは行動規範についての協議の開催で合意しました。中国は従来、行動規範策定の協議は時期尚早だとしており、事態が前進するかが注目されます。
ARFは、紛争解決にとっての対話の重要性を改めて示しています。紛争が起きても、武力衝突への発展を防ぎ、平和的に解決するための知恵がますます求められています。ASEANが体現する「平和の地域共同体」はそのモデルとなるものです。
対話を重層的に進め「予防外交」に取り組むASEANの基本となっているのが、東南アジア友好協力条約(TAC)です。TACは主権尊重、干渉の拒否、内政不干渉、紛争の平和的解決、武力による威嚇・行使の放棄、協力を基本原則としてうたっています。
ARF議長声明は、TACを「拡大する国家間関係の行動規範」だと指摘しています。TACには欧州連合(EU)未加盟のノルウェーが今年加盟し、加盟国は32カ国・地域に達しています。
北東アジアの平和にも
日本を含む北東アジアでも、安定した平和を築くことがきわめて重要です。日本共産党は参院選政策で、「ASEAN方式」を北東アジアに広げ、憲法9条を生かし、軍事に頼らない「平和的安全保障」を提案しています。
安倍晋三首相率いる自民党は、日米同盟を強化し軍事手段による安全保障を掲げています。積極的に平和を築く道か、それとも戦争に引き込む危険な道か―この点でも、自共対決は鮮明です。