2013年7月4日(木)
「大飯」運転継続容認
結論先にありきの規制委
原子力規制委員会が関西電力大飯原発3、4号機の現状を「新基準」に照らして「直ちに安全上重大な問題は生じない」と判断し、運転継続を容認しました。新基準が求める対策が整備されていないのに代替対策で「要件を満たす」などと容認し、調査中の敷地内活断層などの問題は棚上げにするなど、新基準との適合状況を確認する作業は「運転継続の結論先にありき」といえます。
もともと同原発は2012年7月、政府自らが決めた「暫定基準」をもとに、「再稼働ノー」の世論を無視して再稼働を強行したもの。規制委の田中俊一委員長はこれまで「暫定基準」は「抜けがある」と指摘しつつも「運転を止める権限はない」としていました。
3月になって規制委は、稼働中の3、4号機についての新基準適合状況は、運転停止を求めないで行う方針を決めました。「審査ではない」と検討事項もしぼり、結論を2カ月で出しました。
関電は、規制委が求めた原発敷地外の三つの断層が連動した場合の原発への影響評価を何度も拒否し、6月になって、従来の想定を超えないという計算結果を提示。6月末までに結論を出す検討会では、計算結果を複数の観点から検証する作業もなく、関電の評価を容認するだけでした。
また原発を襲う地震の揺れを計算する上で重要とされる、原発敷地内外の地下構造の詳細把握も関電はまともにやらずじまい。規制委も評価書で「詳細に把握できているとはいいがたい」というだけでした。
福島第1原発事故では、1週間で100ミリシーベルト以上被ばくした作業員が続出。しかし、今回の評価では、関電は緊急時対策所での被ばくは同4〜24ミリシーベルトと想定し、規制委も認めました。福島第1原発で重要な役割をした免震事務棟も関電はまだ建設中で、停止中の1、2号機の資料室だから使えるという、間に合わせの施設で代用しました。規制委はこれも容認しました。新基準が東京電力福島第1原発の教訓を踏まえたものになっていないことを示すものです。
電力各社は、8日の新基準施行日に再稼働の申請をすると表明しています。免震事務棟などが未整備の原発も少なくありません。大飯原発が基準を満たしていないのに運転継続が認められたことは、どの原発も「ところてん」式に再稼働が認められかねないことになります。「世界でも一番厳しい規制基準」(規制委の田中委員長)どころか、再稼働ありきの基準にすぎないことをあらためて示しました。(「原発」取材班)
何のための規制基準か
猿橋巧党おおい町議の談話
大飯原発では敷地外の3断層が連動する場合の評価や、敷地内の非常用取水路の下を走る破砕帯が活断層かどうかなど、結論の出ていない重大な問題があります。にもかかわらず昨年の政府の「暫定基準」をもとに強行された再稼働を既成事実に、運転継続を認めるのは非常に問題です。
徹底してまず調べるのが規制機関の役割ではないか。大飯原発だけを特別扱いする理由は何もありません。原子力規制委員会の考え方に不信の念を持ちます。しかも基準で決められた免震事務棟さえまだ関電は建設中です。運転継続なんて到底認められません。これで安全性を誰が担保できるのでしょうか。
8日にも各地の電力会社が原発の再稼働の申請をすると表明しています。その先例となる今回の判断は間違っており、何のための規制基準かと言いたい。