2013年7月3日(水)
きょうの潮流
はや7月。本格的な夏のシーズン到来です。天気の長期予報によると、北日本や東日本では今月前半から気温がかなり高くなるとか。暑さに備え、お互い健康には十分留意したい▼各地の山や海にも人が押し寄せる季節。しかし国土の3分の2を山地が占める日本では、古くから山は聖なる場所でした。むやみに立ち入ることはできず、夏の一定期間だけ信仰のために開放しました。これが山開きの起源です▼世界遺産になった富士山も1日の山開きから大にぎわい。山頂までつづく行列には、ハイヒールやサンダル、Tシャツ姿の登山者も。これでは危険に遭いにいくようなもの。登山のルールやマナーを守り、自然や他人への思いやりを忘れずに▼富士登山は江戸時代も盛んでした。すげ笠(がさ)をかぶり、白装束に手甲(てっこう)脚半(きゃはん)。金剛杖(づえ)につけた鈴を鳴らし、「六根(ろっこん)清浄(しょうじょう)、お山は晴天」と唱えながら登る人たちは富士講と呼ばれ、江戸八百八講といわれるほどひろまりました▼六根とは目、鼻、耳、舌、身、意。身は触覚で意は意識を表し、人間に備わる知覚を指します。六根から生じる迷いや欲望を断って、清らかな身になる。その六根清浄が変化して「どっこいしょ」のかけ声になったという説もあります▼いまでは立ったり座ったりするとき、思わず口からもれる「どっこいしょ」。暑くなるにつれ、自然に回数も増えそうです。信仰や修行とは縁のない当方なれど、せめて語源を思い返して六根を磨きたい。世直しがかかる、今夏をのりきるためにも。