2013年7月2日(火)
米NSA盗聴問題
米欧自由貿易協定「交渉できない」 独への電話盗聴1日2000万件
欧州に反発広がる
【パリ=浅田信幸】米国家安全保障局(NSA)が欧州連合(EU)本部を含めて主要国の通信内容を傍受していたとの事実暴露について、欧州で反発が広がっています。米国とEUは今週中に環大西洋貿易投資連携協定(TTIP)の交渉開始を予定していますが、盗聴問題が影響を及ぼす可能性も指摘されています。
EUでは6月30日、欧州委員会が米国に正式に説明を求めたほか、レディング欧州委員(司法担当)が報道官を通じて声明を発表。TTIP交渉に関連して「少しでも欧州の交渉担当者を盗聴しているとの疑いがあれば、交渉などできない」との態度を表明しました。
今回の暴露ではEU以上にドイツが、中国やイラク、サウジアラビアと同等の「標的」とされたことに鋭く反発。ロイトホイサーシュナレンベルガー法相は同日、「冷戦時代の敵の行動を思い出させる」「米国が欧州を敵とみているとは想像を超える」と批判しました。
ドイツの週刊誌シュピーゲルの報道によると、欧州でドイツは他国以上に強い監視の下に置かれています。たとえばフランスに対する電話盗聴は平均して日に200万件であるのに比して、ドイツは電話盗聴2000万件、インターネット通信の傍受1000万件にのぼり、月5億件の記録がとられているといいます。
フランスではファビウス外相が、「事実とすればこれらの行為はまったく容認できない」と批判し、トビラ法相も「計り知れない敵意を持った活動」だと非難しました。またベルギー元首相のフェルホフシュタット欧州議員は「米国のデータ収集狂は別の質的レベルに達している」と警告しました。
仏紙ルモンド(電子版)によると、こうした反発に対し、米国当局は、外交ルートを通じた「適切な形で」応えると述べています。