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2013年6月29日(土)

“生きた日本共産党がわかる書”

上田七加子『道ひとすじ』 中国で研究者が紹介

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(写真)中国社会科学院マルクス主義研究院の鄭萍氏

 上田七加子著『道ひとすじ――不破哲三とともに生きる』(2012年4月中央公論新社発行)を手がかりに、日本共産党の戦後のたたかいの特徴に注目する論文が、中国の『世界社会主義黄書』(2012―13年版)に掲載されました。この『黄書』は、中国社会科学院の世界社会主義研究センターが定期的に発表している世界の社会主義の理論と運動についての研究論集です。

 筆者の鄭萍(ていひょう)さんは中国社会科学院マルクス主義研究院の研究者で、日本に18年間滞在して大学講師などを務めた経験もあり、日本共産党の社会科学研究所と中国社会科学院との理論交流にも加わっています。

 鄭萍さんは、この論文を発表するにあたって、その意図を次のように語っていました。

 “社会主義運動史の角度から言えば、この本は、64年の党歴を持つ日本共産党の女性党員である上田七加子が書いた、第2次世界大戦後の日本共産党の運動史です。彼女はかつて日本共産党の基礎組織(支部)に属して、労働運動、女性運動、市民運動に参加し、その後日本共産党の中央幹部である不破哲三の妻として、夫が革命運動を繰り広げるのを助けてきました。本書には、党綱領、規約や理論の論述はありませんが、七加子自身の革命活動を素描する過程で、党史の筋道をはっきりとスケッチし、第2次世界大戦後の日本共産党の社会主義運動史に表れたいくつかの特徴を明らかにしています。この文章で、七加子の革命活動を紹介することを通じて、日本共産党の綱領と活動を紹介・批評することを試みたいと思いました”。

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(写真)社会科学文献出版社(中国)の本

「国民の目線」に共感

 論文は、この観点から『道ひとすじ』の内容を、次の六つの章に分けて説明しています。(1)「『軍国少女』から日本共産党への転換」(2)「労働組合運動を組織し、基層労働者の生活の真相を理解」(3)「市民運動に参加・指導し、広範な民主統一戦線をつくる」(4)「庶民の町から政治の世界に向かい、金権政治の古い意識を打ち破る」(5)「資本主義の枠組みの中で、議会の道はけわしく困難」(6)「さらにすばらしい社会の建設のために、時代の先頭に立ってたゆまず奮闘」。

 鄭萍さんは、七加子が1948年に日本共産党に入党した後、労働運動やさまざまな住民運動、夫の選挙活動などに関わったことに触れながら、それは日本共産党の戦後運動史の一側面を見事に描き出していると指摘。とくに、

 ▽労働運動の活動家時代に、警察の弾圧の下でも労働組合の再建、女性労働者の待遇改善と婦人部の確立、農民との交流

 ▽活動の舞台を市民運動に移してからは、自治会やPTAに参加し、保育園・小学校の新設、小児まひ生ワクチン注射の実施など、住民の要求を実現する共産党の活動をすすめたこと

 ――などのエピソードを紹介し、「『国民の目線』で考え問題を処理する」という姿勢に共感を寄せています。

革命路線に注目

 鄭萍さんは、選挙を通じて多数者の支持を獲得し、資本主義社会を変革するという日本共産党の革命路線に強い関心を向けています。「語られているエピソードの一つ一つは、日本の選挙政治の実態の一コマを生き生きとユーモラスに描き出している」。

 そこでとくに指摘されているのは、この路線が一路前進といったものではなく、「ブルジョア政党」などとのはげしい闘争を内容とするものであり、前進と後退の脈動の中で、展望をきりひらいてゆくものだという点です。

 「彼女(七加子)は選挙がいつも順風満帆であるわけではないと総括している。“最初のうち、私は単純に、選挙の回数を重ねれば、支持もそれにつれてかたまると考えていた。しかし、事実は絶対にそうではない。選挙はその時どきの世間の動向や政治情勢に深く左右される。ひとたび日本共産党の力が強まれば、一部の勢力がこれを圧倒しようとして、強い攻撃をうけることになる”」。

 「ブルジョア政党による共産党への抑圧はこれまでやんだことがなく、彼らが共産党の発展を容認することはありえず、はては各党派の利益を超えて、共産党に対する連合をくむことさえできるのだ」。

 論文は、最後の第6章で、全体をふりかえって、次のようなまとめの言葉をのべています。

 「われわれは、本書の内容を通じて、戦後の日本共産党が、国の民生にかかわる諸問題にたいして、終始時代の最前線に立ち、一貫して力強い呼びかけをおこない、行動を進め、真に国民の権利をかちとり守るためにブルジョア政権と頑強にたたかってきたことを、知ることができる」。

 鄭萍さんは、“中国の読者にとって、大きく異なる日本の政治社会そのものが珍しいだけでなく、党歴64年の日本共産党女性党員による生きた日本共産党紹介となっているところが興味深いものです”と語っています。

 鄭萍論文の大要は『前衛』9月号に掲載されます。


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