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2013年6月26日(水)

「あたご」上告を断念

東京高検 不当判決が確定

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 2008年2月に千葉県房総半島沖で海上自衛隊のイージス艦「あたご」(舩渡健一艦長=当時)がマグロはえ縄漁船「清徳丸」に衝突、沈没させ漁師親子が死亡した事故で、業務上過失致死罪などに問われ、一審、二審で無罪となったあたごの2人の当直士官(当時)について東京高検は25日、上告を断念しました。

 これにより元水雷長の長岩友久3佐(39)、元航海長の後潟(うしろがた)桂太郎3佐(41)の無罪が確定しました。

 一審(横浜地裁)は、漁船が右転を繰り返し増速したことが衝突の主因とする被告側の主張を採用、あたごに回避義務がなく、両被告に過失はないとしました。

 東京高裁は11日の判決で、「被告人両名の過失を認定しなかった原判決は明らかな事実誤認がある」との検察側主張を退け、一審判決を支持し、控訴を棄却しました。

 横浜地方海難審判庁(当時)は09年、衝突の主因はあたご側にあるとした裁決を出していました。

 清徳丸の遺族は「衝突の原因が清徳丸にあるかのような判決は納得できない」として最高裁への上告を求める要請書を東京高検に提出していました。

解説

海自利益に沿った流れ

 一審、二審判決に対し、清徳丸の船長親子の遺族は「海難審判はあたごに原因があるとした。それがなぜ自衛官が無罪で、兄貴が“有罪”になるのか、納得できない」と無念な思いできました。

 東京高裁で井上弘通裁判長は、元被告の無罪について「疑わしきは被告人の利益に」の原則によるとしました。

 被害者、被告人双方が健在なケースではありえます。しかし漁船の船長が死亡し、あたごの乗組員の主張が基本にならざるを得ないという今回の事故の場合、「被告人の利益」の適用については「慎重かつ客観的な判断が必要」(海難審判に詳しい弁護士)との指摘があります。

 一審、二審が採用した清徳丸の直前の右転の繰り返し、増速という航跡は、いわばあたご側の利益に沿ったものであり、それはそのまま清徳丸の不利益になるからです。

 遺族にとってこれほどの「不当判決」はありません。検察は、憲法や判例違反がない以上、上告は困難との立場です。しかし前出の海難関係者は「上告受理申し立ては可能ではないか」と指摘します。今回の一連の判決は検察も主張するように「重大な事実誤認」がある以上、「最高裁の職権で取り上げ、判断してほしい」という遺族の痛切な願いに応えるべきでした。 (山本眞直)


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