2013年6月26日(水)
主張
区割り法再議決
小選挙区制に固執する暴挙だ
衆院小選挙区の数を五つの県でひとつずつ減らす「0増5減」にともない、17都県の42選挙区で区割りを変更する区割り法案が衆院本会議で再議決され、自民・公明の与党に加え維新の賛成で可決されました。区割りの変更は、民意をゆがめ、大政党に有利な小選挙区を固定化するものです。与党は「1票の格差」是正を口実にしましたが、もともと小選挙区制では格差は是正されないうえ、「0増5減」後の人口変動で変更後も2倍を超す格差がうまれることが明らかになっています。小選挙区制に固執せず、民意を正しく反映する選挙制度に抜本改革すべきです。
再議決自体が異例
衆院での再議決は、衆院で議決した法案が参院に送られて60日たっても議決されないときは、法案が否決されたとみなし、衆院で再議決し3分の2以上の賛成で可決すれば成立させられる憲法の決まりです(59条)。法案は本来衆参両院で議決されるべきもので、否決されたとみなし再議決で成立させたのは、戦後今回を含め3回しかありません。議会制民主主義の土台になる選挙制度の法案が、再議決で成立させられること自体、望ましいものではありません。
衆院小選挙区の「0増5減」案は、小選挙区ごとの「1票の格差」がとりあえず2倍を超えないよう取り繕っただけのもので、民主党政権最後の野田佳彦政権のもとで、衆院の解散と引き換えに、民主党、自民党、公明党などが談合して成立させました。国民が求めたのは民意が国会の議席に正しく反映されることです。国会を構成する各党間でも、民意を正しく反映する選挙制度の実現をめぐって協議が続けられました。当時政権にあった民主党が、消費税増税の口実に「身を切る」などといった衆院比例定数の削減と抱き合わせで小選挙区の定数是正を持ち出したのは党利党略そのものです。
民主、自民などが衆院の解散にからめ「0増5減」を談合で成立させたこと自体不当ですが、「0増5減」にもとづく区割り法案は、自民、公明などが多数を占める衆院ではわずか1日だけの審議で可決されたものの、参院では審議もされていません。もともと民意の公正な反映とは無縁な法案であることに加え、格差を2倍未満に抑えるという口実さえ通用しないことが明らかになったからです。
小選挙区制度は、4割台の得票で8割の議席といわれるように、国民の投票を議席に正しく反映しない、民意をゆがめる選挙制度です。小選挙区制を前提にする限り、どんなに区割りを変更しても、民意の公正な反映は実現しません。しかも、選挙区を細分化する限り、絶えず区割りを変更しなければ格差が拡大するというのが小選挙区制の欠陥です。市町村まで分割する人為的な区割りは、地域社会を破壊します。
根拠は失われている
総務省のことし3月の推計人口で計算したところ、すでに六つの選挙区で格差が2倍を超しています。「0増5減」にもとづく区割りを強行する口実は完全に失われており、区割り法の成立は選挙制度に汚点を残す暴挙です。
小選挙区制度を廃止し、民意を公正に反映する選挙制度への抜本改正こそ急ぐべきです。民意を国会から締め出す、衆院比例など議員定数の削減など論外です。