2013年6月11日(火)
主張
日本版NSC法案
なんのための戦争の準備か
安倍晋三政権が、アメリカの「国家安全保障会議」(NSC)と同じように、日本にも外交や安全保障政策の「司令塔」になる、「日本版NSC」(仮称)を設置する法案を国会に提出しています。
安倍政権は、安全保障政策の基本になる「防衛計画の大綱」を見直して軍拡を一気に進め、「敵基地」攻撃などの能力を持つことや、日本が直接攻撃されていなくてもアメリカ軍といっしょにたたかう「集団的自衛権行使」の検討も進めています。いったいなんのための戦争の準備でしょうか。
「海外で戦争する国」に
「日本版NSC」の設置はもともと第1次安倍政権時代に持ち出されてきたもので、安倍首相のいわば執念ともいうべきものです。先週末国会に提出された法案には、首相、官房長官、外務、防衛の「4大臣会合」を設置し、首相の下に情報を一元化して外交や安全保障の中枢として活動することや、専任の首相補佐官を置くこと、情報収集などのため内閣官房に「国家安全保障局」を設置することを盛り込んでいます。会期末近くに法案を提出したのは、今国会では成立しなくても継続審査とし、次の国会で成立させるためです。
内閣には今でも「国防」や「重大緊急事態」に対処する「安全保障会議」があり、閣僚の任免権を持つ首相が指揮して、外務や防衛、警察などの官庁が活動しています。安倍首相はしきりに「日本型NSC」がなければ「緊急事態に対処できない」といいますが、安倍政権以外ではほとんどその必要性さえ議論されないのに、安倍政権でだけ持ち出されるのは異様です。
第1次安倍政権が最初に「日本版NSC」を持ち出したのは、アメリカのブッシュ政権の関係者からアドバイスを受けたためだといわれました。「日本版NSC」をつくろうという発想自体がいわばアメリカのまねです。しかも当時の安倍政権が法案のもとにした「官邸機能強化会議」の報告も、「安全保障会議」が担当する「国防」や「重大緊急事態」を超えた「幅広い外交・安全保障上の課題」にも対処するためと明記しています。アメリカの「NSC」と一体で活動する「日本版NSC」が、「日本防衛」とは無縁の、アメリカといっしょの戦争に都合のよい態勢づくりをねらうのは明らかです。
安倍政権は「防衛計画の大綱」の見直しでは、アメリカに向かうとみられるミサイルについても、「策源地攻撃」の名で発射前に日本が「敵基地」を攻撃できる能力を持つとしています。政府が従来「憲法上行使できない」としてきた「集団的自衛権」についても、行使できるようにしようとしています。一事が万事、安倍政権がねらうのは、アメリカとともに海外で戦争することばかりです。
9条生かす安全保障こそ
日本が戦争しなければならないような事態が差し迫っているわけでも、戦争でものごとが解決するわけでもないのに、アメリカといっしょの戦争のためだけに「日本版NSC」の設置を急ぐというのは異常です。紛争があっても戦争にしないことこそ人類の知恵であり、憲法9条で戦争を放棄した日本はその先頭にたつべきです。
「海外で戦争する国」への動きを阻止するためにも、安倍政権の「日本版NSC」強行の動きは、断念させることが重要です。