2013年6月8日(土)
英、ケニア人弾圧に補償金
5228人に20億円
植民地時代の迫害
ケニアの反植民地独立運動「マウマウ団の乱」(1952〜60年)での弾圧をめぐって、英国のヘイグ外相は6日、議会で遺憾の意を表明し、弾圧の被害者5228人に総額1390万ポンド(約20億円)の補償金を支払うことを明らかにしました。同外相は、政府が公式の責任を負うことになるとの配慮から、公式の謝罪は行いませんでした。(夏目雅至)
同外相は「英政府は、ケニア人が植民地行政当局の手で拷問やその他の虐待を受けたことを確認する」と言明。「英政府はこの迫害行為が行われたことを心から遺憾に思う」と語りました。
「マウマウ団の乱」は、土地と英国の植民地支配の終結を求めた運動で、弾圧によって約3万人が死亡、マウマウ団と関係のない人々を含め8万人から30万人にのぼる人々が収容所に入れられ、拷問などの虐待を受けました。60年に弾圧されましたが、63年のケニア独立の契機となりました。
これまで英国は、弾圧の責任は独立後のケニア政府が負うべきだとの立場に固執していました。しかし、弾圧被害者のケニア人3人の提訴を英高等法院は昨年10月に認め、原告の裁判権を確認しました。
ロイター通信によると、弾圧被害者でつくる「マウマウ団元兵士協会」のギトゥ・ワ・カヘンゲリ書記長は、ナイロビでの集会で「われわれがテロリストではなく自由の戦士だったことが確認された。英国人が“ケニアでやったことは間違いだった”と言うのを長年待っていた」と言明。補償は十分ではないが、生存者は年を取っており、訴訟が長引くと死んでしまうので、この補償金を受け入れることになると語りました。
英国の植民地支配時の弾圧に対する補償要求は、キプロス、マレーシア、イエメン、スワジランド(南部アフリカ)、ガイアナ(南米)などでも出ています。ヘイグ外相は、「今回の措置は他の植民地統治との関係では前例とはならない」としていますが、今後の推移に大きな影響を与えそうです。