2013年6月6日(木)
認可保育所 基準緩和ねらう
株式会社の参入拡大
規制改革会議答申
5日に発表された規制改革会議答申は、議論の中で打ち出された規制緩和策がそのまま位置付けられたものとなっています。
その一つが、認可保育所への株式会社の参入拡大です。
同会議は、待機児童が解消されないのは株式会社など多様な経営形態の参入がすすまないからだと決めつけました。首都圏を中心に保育所事業を展開するJPホールディングスの山口洋社長が同会議に出席し、株式会社参入を認めているかどうかの自治体一覧表を提示。参入を促進させるよう迫りました。5月15日には、厚労省が株式会社参入を促す通知を各都道府県や指定都市に出しました。
横浜市は、認可保育所の4分の1を株式会社に任せることで「待機児童ゼロ」を達成しました。この「横浜方式」を全国に広げるという安倍首相の方針と相まって、参入への動きが加速しています。滋賀県知事は「株式会社参入も前向きに評価して認可していきたい」と発言。千葉県船橋市議会は山口社長を参考人として招致し参入の検討を始めました。
経費のうち人件費が7割以上を占める保育所運営には、営利が目的となる株式会社はなじみません。横浜市議会では、人件費を4割にまで押し下げた認可保育所に衝撃が広がりました。
二つ目が、事業所内保育施設の避難用屋外階段の設置義務について、保育所増設の「阻害要因」だとし、「(現在と)同等の安全性と代替手段を前提として緩和」する方向で検討し、結論を得るとしていることです。
保育室が4階以上にある場合は、屋内階段だけでなく、避難用の屋外階段の設置が義務付けられています。この安全基準が仮に建築基準法だけのレベルに緩和された場合は、内外を問わず避難階段は一つでいいことになります。代替手段として考えられるのは避難ばしごや救助袋などですが、どちらも幼い子どもと一緒に避難するには危険が伴います。
さらに問題なのは、今後の方向性です。
例えば、保育所にかんする基準緩和もねらっています。答申には「予算上の制約等を勘案し、合理的な最低基準が設定されるようその在り方を常に見直すべき」とあります。同会議は、待機児童解消策の大きな柱として認可保育所の面積基準の緩和をあげていました。
しかし、最低基準は子どもの育ちと命を保障するものです。4月17日には五つの保護者団体と個人が同会議と田村憲久厚労相に意見書を提出し、「今でも低い最低基準を引き下げないで」と要望したばかりです。
保育にかんするこれらの規制緩和策は、2015年度から本格実施する「子ども・子育て支援新制度」の前倒しといえるものです。国の責任による保育制度の充実ではなく、市場化の拡大で保育さえも自己責任でという流れを強めようというものにほかなりません。 (堤由紀子)