2013年6月6日(木)
国連も地方も非難
橋下妄言 批判広がり続ける訳は
日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)による「慰安婦は必要」との妄言に対し、国内外からの批判がとどまりません。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長が異例の批判をし、人権に関する委員会が日本政府に勧告を提出。日本国内でも各種団体の抗議をはじめ、地方議会での非難決議があいついでいます。
欠ける歴史認識
「女性の人権を蹂躙(じゅうりん)し尊厳と名誉を傷つけたという歴史認識に欠け、性暴力被害者をさらに傷つける断じて許されない暴言」「女性を道具のごとく扱う人権感覚の橋下氏に公職を務める資格はない」
千葉県議会の全女性議員の抗議声明(5月17日)はこう指摘しました。抗議が広がっているのは、女性を“戦争の道具”のようにみなす橋下氏の妄言が、国際社会の到達した人権基準からみても決して許されないからです。
米国のジョディ・ウィリアムズさん、イランの人権活動家シリン・エバディさんらノーベル平和賞受賞の5人の女性は5月30日、「戦時中の『性奴隷』は性暴力であり、今日では戦争犯罪と定義されている」とし、「(橋下氏の)嘆かわしい発言を最も強い言葉で非難する」との声明を出しました。深刻な戦争犯罪を「必要」などと容認したのですから、弁明の余地はないのです。
新たな人権侵害
しかも、橋下氏が妄言を謝罪・撤回するどころか、会見などでくり返し正当化をはかっていること自体が新たな人権蹂躙だとの非難があがっています。
埼玉県新座市議会の決議は、外国特派員協会での橋下氏の会見について「釈明と論点すりかえの繰り返し」と批判。大阪府吹田市議会決議は、橋下氏が「慰安婦」必要論に固執し続けることは「『慰安婦』の方たちを深く傷つけ、同時に基本的人権を尊重する日本の品格をおとしめることになる」と指摘しています。
国連の潘事務総長が2日、朝日新聞との会見で、橋下発言とその後の釈明について「国際社会は納得しない」と明言したことは世界に報じられました。
国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会は5月31日、橋下発言を念頭に「公人による事実の否定、否定の繰り返しによって、再び被害者に心的外傷を与える意図に反論すること」を政府に求める勧告をまとめました。
逆流全体に警告
しかも、これらの発言や勧告が、橋下氏だけでなく、日本の歴史逆流の動き全体に警告を発していることも重要です。
潘氏は、安倍内閣の閣僚らの靖国神社参拝も「周辺国に否定的な反応を引き起こしている」と批判。国連拷問禁止委員会の勧告も「国政および地方の高官や国会議員を含む政治家」が「慰安婦」問題で「事実を公に否定し、被害者に新たな心的外傷を与え続けている」と非難しています。
橋下妄言への批判からみえてくるのは、人権問題、とりわけ日本軍「慰安婦」問題に真正面から向き合うことなしに、国際社会で生きていくことはできないということであり、それを理解しない人物に政治に携わる資格はないということです。 (遠藤誠二)
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