2013年6月4日(火)
きょうの潮流
「投資すべきは、今です」。3日、閉幕した第5回アフリカ開発会議(TICAD5)での安倍晋三首相のことばです。人気予備校講師のキャッチフレーズ「今でしょ」を連想させる表現で、アフリカへの投資を促しました▼国際資本にとって、アフリカは最後の「フロンティア」とされており、豊富な地下資源などの獲得競争が過熱しつつあります。日本の企業進出は、欧米などに比べて遅れています▼政府にとっては、中国がここ数年で対アフリカ貿易額を2倍以上に増やしていることも気がかりです。アフリカの54カ国を味方につければ国際社会で発言力を増すことができる、だから中国に後れをとってはならない、という思惑も透けてみえます▼もっとも、国際政治の力学を気にするなら、アメリカいいなりで独自の外交戦略を持てない「思考停止」状態をまず、何とかすべきでしょう▼内戦や貧困などによるアフリカの人道危機は依然、深刻です。昨年だけで、東日本大震災の避難者の2倍となる60万人の難民が発生し、総数は1300万人に達します。投資と援助は対立的なものではありませんが、人道支援の重要性に変わりはありません▼日本が憲法を生かした外交を具体化すれば、紛争解決や貧困克服など、やれることは無限にあります。「思考停止」から抜け出し、苦しむ人々への共感性と創造力を高めることが求められます。ただし、アフリカPKO(国連平和維持活動)への自衛隊派兵を拡大するなどは、もってのほかです。