2013年6月2日(日)
アジア太平洋地域の平和へ
米中「戦略的信頼」醸成を
ベトナム首相呼びかけ
アジア安保会議
【シンガポール=面川誠】ベトナムのグエン・タン・ズン首相は5月31日、第12回アジア安全保障会議の開幕基調演説で、アジア太平洋地域の平和のために米国と中国が「戦略的信頼」を醸成するよう呼び掛けました。
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ズン氏は「戦略的信頼を築くためには、とりわけ大国が責任を果たすべきだ」と述べ、「米中間の協力が地域の共通利益に積極的な貢献になる」と強調。その前提条件として、国際法の順守を挙げました。
米中の「戦略的信頼」醸成は、インドネシアのユドヨノ大統領、シンガポールのリー・シェンロン首相も呼びかけています。妥協の難しい問題を抱えることを認め合い、互いの戦略を理解し合って相互利益になる協力分野を拡大することによって信頼を醸成し、平和と安定の条件づくりの基礎をつくるという意味合いで、「戦略的信頼」が使われています。
ズン氏は、信頼醸成に反する例として、東シナ海と南シナ海の領有権争いに言及。「一方的な力の選択、根拠のない主張、国際法に逆行し、ごり押しと力の政治に由来する行動」を挙げ、「航行の自由」を守るべきだと強調しました。
同氏は、地域の平和と安定を築くために東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心とした多国間安全保障の枠組みがあると強調する一方で、米中間とASEAN・中国間の戦略的信頼が足りないことが困難を生んでいると指摘しました。
ズン氏の演説は事実上の中国批判と受け取られました。演説後、中国代表団員が「航行の自由が誰によって、どのように阻害されているのか説明してほしい」と質問しましたが、ズン氏は明確な回答を避けました。