2013年5月31日(金)
真相 深層
監視カメラ400万台
会話録音 動き検知 顔照合…
「監視カメラ作動中」。マンション、銀行、駅、道路で見慣れた光景です。この10年、日本で急速に増えている監視カメラ。規制はどうなっているのか、プライバシーは大丈夫なのか―。考えてみました。 (芦川章子)
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「住みたい街」として人気の東京・吉祥寺(武蔵野市)。市はこの3月、商店街に補助金をだし、街頭の防犯カメラ約60台を増設することを決めました。2月に路上で帰宅途中の女性(22)が少年2人に刺殺されたからです。事件現場近くに勤める女性(34)は「仕事帰りなんて暗いし、本当に怖い。カメラ? ないよりは安心です」といいます。
さらに“進んだ”街もあります。東京・JR新橋駅前の烏森通り。1本の街灯に3〜5台のカメラがあらゆる方向に向けて設置されています。数えてみると約50メートルに40台、同駅周辺だけで約80台が動いています。カメラを設置・運営するのは、警視庁愛宕(あたご)署が商店会などによびかけて昨年5月に発足した「愛宕防犯カメラ設置協議会」です。同署管内だけで300台を置く方針です。
6年で3倍
監視カメラの国内設置台数は「推定で350万〜400万台」(業界団体)。駅構内だけで6万1千台(2012年3月)と、この6年で3倍(国土交通省)に増えました。
カメラの技術も進化しています。
▽街頭の会話を録音できる▽人(物体)が集まったり、急に動いたりするのを自動的に検知し、警察署に送信できる―などのカメラがあります。
システムも進化。警視庁は11年3月から3年間の予定で「三次元顔形状データベース自動照合システム」の試験運用を行っています。
カメラ映像を瞬時に警視庁のネットワークに送信し、映った顔を3次元で解析、犯罪容疑者の顔写真と自動的に照合する、というもの。警視庁は、都内にある民間カメラ20台を使用していますが、どこのカメラを使っているのかなどの詳細は一切明らかにしていません。
法規制なし
街頭で聞くと、「監視されているようで全然安心じゃない」(50代女性)という声もありました。
日本弁護士連合会(日弁連)で人権擁護委員会副委員長を務める武藤糾明弁護士は「犯罪捜査の名のもと、監視カメラで無差別に撮影した大量の市民データが、令状もないまま警察に任意に提供される“違法状態”が横行している」といいます。
今、大きな問題は、こうした監視カメラの運用を定める基準や法律がないことです。条例を定めた自治体もありますが、ごくわずかです。
日弁連は12年1月、「監視カメラに対する法的規制に関する意見書」を発表。設置場所、利用方法などの法規制を求めています。
欧州連合(EU)では「データ保護指令」として、個人のプライバシー情報の収集や利用方法などの基準を定め、加盟国に義務付けています。米国でも昨年10月、連邦取引委員会が、顔認証システムの運用指針を公表。目的や収集情報の内容を撮影対象者に明らかにすべきだとしています。