2013年5月30日(木)
論戦ハイライト
生活保護改悪案 高橋議員が追及
増える餓死者 命守れない
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「“水際作戦の合法化”ではないか」――。29日の衆院厚生労働委員会で生活保護法改悪案の撤回を求めた日本共産党の高橋ちづ子議員。最後のセーフティーネットである生活保護から国民を締め出す重大な問題点が浮き彫りになりました。
法の基本理念変えぬと答弁
高橋氏は憲法25条(生存権)に基づいた生活保護法の基本理念は変わっていないのかと確認。田村憲久厚労相は「憲法の権利を具現化するセーフティーネットが生活保護制度。根幹は何も変えていない」と答弁しました。
誰にでも受ける権利はある(無差別平等)、個々の事情を顧みず機械的な対応をしない(必要即応)―という生活保護の大原則についても、桝屋敬悟厚労副大臣は「何ら変わらない」と答弁しました。
「水際作戦」の合法化になる
ところが法案では、これまで生存権を守る立場から口頭でも申請を受け付けていたのを、申請書や内容を証明する書類の提出を義務付けます。高橋氏は、今でも申請にまでたどりつける割合は49・7%(2011年)と半数以下だと指摘。日弁連も「水際作戦を合法化させる」と批判していることを挙げ、義務付けをやめるべきだと求めました。
高橋 書類がそろわないと保護は受け付けないのか。
村木厚子社会・援護局長 実際の運用を変えることは一切ない。そろわないと受け付けないものではない。
高橋 変わらないのなら、書かなければいい。法律に書いたわけだから義務になる。
高橋氏は、福岡県北九州市の餓死事件では、申請を締め付ける「水際作戦」が判決(09年)で断罪されたことを指摘。申請したくても半分以上が書類にさえたどりつけない実態を挙げ、「水際作戦の合法化ではないか」と追及すると、田村厚労相は「それは不適当な対応だ」と答えざるをえませんでした。
「扶養義務」を強め締めつけ
改定案は、親兄弟などが扶養義務を履行していない場合は、扶養義務があることを通知したり、「報告を求めることができる」ことなどを盛り込んでいます。
村木局長は、「必ず扶養できる人に限って行うものだ」とし、収入などの調査についても、「本人同意がない場合は適当でない」と答えました。
高橋 現場ではかなりのことがやられている。大学に通う19歳の学生に姉の扶養義務の照会がきた事例もある。家族の絆、親族の関係もみんな壊れる。
村木 家族の問題に行政が踏み込んでいくのは相当慎重にしなければならない。
高橋 国会で取り上げられてから、申請をためらうケースが増えるなど、すでに「アナウンス効果」が抜群に発揮されている。
高橋氏は、札幌市の女性がニュースを見て「簡単には受給できないだろう」と考えて母親と心中を図った例を紹介、申請の締め付けになるとただしました。
田村厚労相は、「心配の点は各自治体に通知し、ご懸念のない形ですすめる」と答弁。高橋氏は、国内の餓死者(栄養失調と食糧不足による死者の合計)が2000年の1314人から11年の1746人に増加していると指摘(表)し、「これほどの経済大国・日本で餓死者がこれだけいるということは非常に重大だ」と強調しました。
また、いわゆる「不正受給」は生活保護受給額全体の0・5%にすぎず、申告漏れなど悪意のないものがほとんどだと指摘。「生活保護申請の却下との関連も含めて調査し、こうしたことが起こらないようにすべきだ。保護のハードルを下げてまず命を守る姿勢に転換すべきだ」と主張しました。
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