2013年5月29日(水)
コロンビア和平交渉
農地・農業改革で合意
政府と反政府武装集団 「歴史的一歩」
南米コロンビアの政府と反政府武装集団コロンビア革命軍(FARC)は26日、キューバの首都ハバナで行われていた和平交渉の第1テーマ「農地・農業改革」で合意に達しました。合意は零細農民への農地提供、総合的な農村開発を含みます。今後の交渉の進展は予断を許しませんが、半世紀にわたり敵対してきた両者が初めて具体的な合意文書に調印したことは「歴史的な一歩」と歓迎されています。
貧困とのたたかい
コロンビアでは大土地所有者が広大な土地を支配する一方、土地を持たない零細農民が開発から取り残されてきました。調印された文書は、「平等と民主主義を伴ってコロンビアの農村・農業の現状を抜本的に変革する始まりとなる」と宣言し、貧困とのたたかいを中心課題として位置づけています。
また「土地を持たない、あるいは不十分な土地しかない農村住民の多くが土地を入手できるよう追求する」と述べ、その方策として「平和のための土地基金」の設置を明記しました。
土地なし農民らが大土地所有者の未利用地を占拠し、耕作する運動も起きています。文書は、政府がこれら農民の既得権を追認し、段階的に土地所有を合法化する方向もうたわれています。
同国の有力紙ティエンポは、政府とFARCによる和平交渉が「少なくとも5回行われたが一度も具体的合意に達しなかった」と振りかえり、今回は「農地と農村開発の分野で大きな前進が達成された」「和平を目指す歴史的な一歩だ」と指摘しました。
交渉支援国が祝意
サントス大統領は「完全合意に向けた画期的な一歩だ」と歓迎のコメントを発表。交渉を支援してきた4カ国(キューバ、ノルウェー、ベネズエラ、チリ)も相次いで祝意を表明しました。
コロンビア国立大学和平過程研究所のバルガス所長は、外国メディアにたいして、今回の合意が農地改革だけでなく、全面的な農村開発を含んでいることの重要性を指摘。合意は「コロンビア社会にとって楽観できるメッセージだ」と述べています。
和平交渉は、(1)農地・農業改革(2)政治参加(3)武装解除(4)麻薬対策(5)犠牲者の権利(6)和平合意の履行―の6テーマを順次話し合うという方式。6月11日からの次回交渉では第2のテーマ「政治参加」に進み、FARCが武装組織から政治組織へ転換する条件などが議論されます。
(菅原啓)
コロンビア革命軍(FARC)と和平交渉 FARCは1964年に農地改革、富の再配分などを掲げて結成された反政府武装集団。近年は政治家の暗殺や身代金目的の誘拐などを繰り返してきました。中南米地域で選挙を通じた政治変革が定着する中、政府との和平交渉が昨年10月から開始。六つの主要テーマが全て合意されれば、最終的な和平合意の成立となります。