2013年5月26日(日)
電力会社・大手商社など
原発輸出・再稼働 首相にハッパ
安倍晋三首相が、トップセールスで原発の輸出を各国首脳に働きかけたり、再稼働に前のめりになるなか、電力会社や原発メーカー、大手商社などのトップでつくる「エネルギー・原子力政策懇談会」(会長=有馬朗人元東大総長、元文相)が2月25日に首相に原発輸出や再稼働を求める「緊急提言」を提出していたことがわかりました。
提言のタイトルは「責任ある原子力政策の再構築〜原子力から逃げず、正面から向き合う」。有馬会長を発起人とし、川村隆・日立製作所会長、北村秀夫・東芝副社長、佃和夫・三菱重工業相談役の三大原発メーカーの代表はじめ、炉心をおおう圧力容器向けの素材で世界シェアの8割を占める日本製鋼所の佐藤育男社長、首相のトップセールスでトルコ原発の売電事業に参画することになった伊藤忠商事の小林栄三会長はじめ大手商社トップなど有志29人の連名です。
経団連元会長も
原発利益共同体の中核組織、日本原子力産業協会の今井敬会長(元経団連会長)や、経済産業事務次官当時、原発を「2020年までに9基」「30年までに、少なくとも14基以上」新増設するという「エネルギー基本計画」(10年6月)をまとめた望月晴文・日立製作所社外取締役も名前を連ねています。
提言は、原子力規制委員会について、「最高水準の叡智(えいち)と現在得られる最大限の情報を活用した検討が実現していない」と批判。「被規制者である事業者等ともオープンに意見交換し、実効的な規制を目指すべきだ」と注文しています。
さらに、「わが国の原子力関連技術に対する世界各国からの期待が大きいこと(を)考慮すると、原発輸出に対する政府の姿勢を明確化することをためらうべきではない」と“激励”。「徹底した安全性の確保を行い停止中の原発の再稼働をはかるべきだ」とハッパをかけています。
昨年にも「提言」
同懇談会は、昨年3月にも、当時の野田首相に、提言「福島からの再出発と日本の将来を支えるエネルギー政策のあり方」を提出、「原発を早く再稼働させるべきだ」と求めていました。
同懇談会のホームページによると、その後、同年4月から今回の提言まで6回の会合を行い、経産省の菅原郁郎産業技術環境局長、資源エネルギー庁の今井尚哉次長(いずれも当時)、東京電力の嶋田隆取締役執行役らから意見聴取しています。
エネルギー・原子力政策懇談会 前身は、2007年7月の新潟県中越沖地震で、東電柏崎刈羽原発が重大事故を起こし、原発への世論の批判が高まった際、「このままでは、日本の原発は、世界の潮流から取り残される」と危機感を持った勢力が設立した「地球を考える会」の「分科会」として、11年2月に設立された「原子力ルネッサンス懇談会」。同年3月の東電原発事故を受け、原発新増設の「エネルギー基本計画」が「見直しを余儀なくされる可能性」にふたたび危機感を持ち、同年4月、名称変更しました。