2013年5月22日(水)
イラク 対立悪化95人死亡
全土でテロ 首相は治安強化表明
【カイロ=小泉大介】イスラム教シーア派とスンニ派との「宗派対立」が悪化の一途をたどるイラクでは、20日も全土で自動車爆弾などによるテロ攻撃が相次ぎ、現地からの報道によると少なくとも95人が死亡しました。暴力による今月の死者は350人を超えました。米軍による戦争で国を破壊され数十万人の命が奪われたイラクは、その戦争開始から10年が経過し、極めて重大な事態に直面しています。
20日のテロが最も激しかったのは首都バグダッドで、主にシーア派住民居住地域で自動車爆弾攻撃が約10回発生し、48人が死亡、150人が負傷しました。これまで治安が比較的安定していた南部バスラでも、中心部のバス発着所で自動車爆弾が爆発するなどし、13人が死亡、40人が負傷しました。
同日には、西部アンバル州で18日に何者かに誘拐されていた警官など14人が遺体で発見される事態も起こりました。
暴力多発を受け、シーア派のマリキ首相は20日の会見で「われわれは治安責任者の入れ替えと戦略の変更に着手した」「私はイラク国民に対して、イラクに宗派抗争をもたらそうとする武装勢力の企てが成功しないことを保証する」と述べましたが、具体策には触れませんでした。
一方、スンニ派の有力政治家で連邦議会(国会)議長のヌジャイフィ氏は同日、治安悪化に対処するために臨時議会を開催すると表明しました。しかしマリキ首相が「宗派対立の激化においては、暴力を扇動した政治家も責任を負っている」と議会開催に反対するなど、政治レベルでの対立も依然として収まる気配をみせていません。
イラクにおけるテロや暴力は一昨年末の米軍「完全撤退」後も断続的に続いていましたが、4月23日に北部キルクーク近郊で政府の治安部隊がイスラム教スンニ派住民の反政府デモを襲撃して多数を殺害して以降、一気に激化しています。