2013年5月22日(水)
主張
安倍政権「成長戦略」
家計潤さねば、成長もしない
安倍晋三政権が、「次元が違う金融緩和」や「機動的な財政出動」とともに、「アベノミクス」(安倍政権の経済政策)の“第3の矢”とねらう、「成長戦略」の検討がすすんでいます。安倍首相は先週までに第1弾として「女性の活用」、第2弾として「民間投資の拡大」を発表したのに続き、6月半ばをめどに「規制緩和」など「成長戦略」の全体像を取りまとめる予定です。第2弾のうたい文句は「世界で勝って、家計が潤う」―。大企業が海外に進出しさえすれば、国民が豊かになるというのは、とんでもないごまかしです。
大企業が栄えるだけでは
安倍首相がいわば小出しで「成長戦略」の発表を重ねているのは、国民の反発が予想される雇用などの「規制緩和」を後回しにして、国民の口あたりのよい政策を並べているつもりでしょうが、「世界で勝って、家計が潤う」とはいかにも古めかしいスローガンです。
かつて「高度成長」時代の経済成長至上主義が“くたばれGNP(国民総生産)”などと批判されたことがありますが、日本企業が海外に進出し、国際競争に勝ちさえすれば生活が豊かになるというのはまったく幻想です。大企業がどんなに大もうけしても賃金や雇用が改善しなければ、“企業栄えて民滅ぶ”結果にしかならないというのは国民の実感です。
安倍首相が先週末発表した「成長戦略」の第2弾で持ち出しているのは、企業の投資を後押しし、インフラなどの輸出を拡大し、企業の海外進出を活発にすることです。安倍首相や経済閣僚が外国を訪問するさい大企業の幹部を同行させ、原発などの輸出を後押ししている「トップセールス」はさしずめその実践でしよう。
しかし、こうした日本の官民あげての輸出や海外進出は相手国との摩擦を呼ぶ恐れがあるだけでなく、日本経済にとっても「産業の空洞化」を加速し雇用の悪化を招きます。世界各地に進出して現地で生産、世界に輸出するのが当たり前のように「多国籍企業」化した日本の自動車メーカーは、大もうけを上げても国内での設備投資には背を向けています。多国籍化した大企業には、自分たちのもうけは増やしても、国民に還元し、日本経済を立て直す立場はありません。こんな大企業がどんなに世界で勝っても、国民の暮らしは潤いません。
実は、財界・大企業が安倍政権の「成長戦略」に求めているのは、そうした身勝手な活動への政府の支援です。財界団体のひとつ、経済同友会は20日、「『成長戦略』と『骨太方針』に向けた緊急提言」を発表しましたが、その中に盛り込まれているのは労働法制の抜本見直しや原発再稼働など、自分たちに都合のいいことばかりです。こんな財界・大企業の横暴勝手を野放しにしては、国民生活はよくなるどころか悪化の一途です。
国民の暮らしをよくする
日本経済の長年にわたる「デフレ不況」が浮き彫りにしているのは、財界・大企業ではなく、国民の暮らしを応援してこそ、暮らしも経済も立て直せるということです。大企業が、賃金や雇用を改善せずため込みを続けたことが経済の低迷の大きな原因です。
大企業いいなりをやめ、国民に所得と雇用を増やす景気拡大に転換することこそ、政府の責任です。