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2013年5月21日(火)

主張

安倍政権の「雇用改革」

ねらいは正社員雇用の破壊だ

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 安倍晋三政権が「成長戦略」の柱としている雇用制度改革の議論が大詰めを迎えています。今回の議論でねらわれているのは「正社員雇用」の破壊です。「正社員保護主義で過剰在庫をかかえていては国際競争に勝てない」などという財界の主張にのって、正社員雇用の多様化、流動化をはかろうというものです。安倍首相が「行き過ぎた雇用維持型から労働移動支援型への政策シフト」を表明し、規制改革会議が「人が動く」をキーワードにしているのがそのあらわれです。

くらしと経済に打撃

 すでに派遣や契約社員など低賃金の非正規雇用が35%を超えている日本で、正社員雇用のさらなる破壊は、国民のくらしと経済に深刻な被害をもたらすだけです。

 雇用改革の骨子とりまとめ作業に当たっている規制改革会議の雇用ワーキンググループの議論は、きわめて意図的で悪質です。たとえば労働者派遣について、常用雇用に代えて派遣を導入するのを防ぐために「臨時的、一時的業務」に限るとしている制度の根幹の見直しを提起しています。常用雇用の代替防止は「正社員の保護」を目的としており、派遣労働者の保護と相いれないというのです。

 これはとんでもないねじ曲げです。本来、企業の恒常的な業務は雇用期間の定めのない常用雇用、つまり正社員で対応するのが当たり前です。その恒常的業務に、コスト削減をねらって、低賃金で雇用責任がない派遣労働者を使おうとする企業の身勝手に歯止めをかけるうえで「常用雇用の代替防止」は重要な意味をもっています。この歯止めをはずしたら、不安定雇用化が一気にすすむ危険が強まります。

 正社員雇用を破壊するやり方として、議論がすすんでいるのが解雇しやすい低賃金の「正社員」づくりです。勤務地や職務、労働時間などを限定して働く「限定正社員」という形態です。正社員ではあっても、特定されている勤務地や業務がなくなれば解雇される口実になります。しかも限定付きだからと賃金も割安です。正社員の大多数を「限定型」にするのが財界のねらいです。解雇が簡単で賃金も安い、企業にとって実に便利な「正社員」です。

 民間の職業紹介の企業を活用して正社員を強引に他産業に移動させる対策も検討の柱です。これまで雇用を守ろうとする企業を支援してきた助成金を、労働者を放出する企業のために使おうとしています。

 大企業による悪名高き「追い出し部屋」の公益版といえるものです。グローバル競争に対応するための事業再編をすすめる大企業を全面的にバックアップするしくみづくりです。

正社員が当然の制度に

 大企業の目先の利益を追って雇用を流動化させることは、労働者の安定した生活の土台を崩すだけでなく、日本経済に新たな困難をもちこむことになります。賃金の引き上げと安定した雇用の確保による労働者の所得拡大こそ本物の景気回復の道です。

 政府は、「雇用改革」というなら、労働者を窮地に追い込む議論を改め、雇用は正社員が当たり前、非正規雇用は臨時的・一時的業務に限るという方向で、人間らしく意欲をもって働き、安心して暮らせる制度をつくるべきです。


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