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2013年5月20日(月)

主張

自民「防衛大綱」提言

何のための「強い軍隊」なのか

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 自民党が、新しい「防衛計画大綱」の策定に向けた「提言(骨子案)」を公表しました。今月中に最終決定のうえ政府に提出、安倍晋三政権が決める新しい軍事政策の基本になります。

 提言の内容は「強靭(きょうじん)で機動的防衛力」を目指すだの、自衛隊に「海兵隊機能」を持たせるだのと、大軍拡を進めるものです。同時に「自主憲法制定と『国防軍』の設置」や「国家安全保障基本法の制定」を目指すなどいいたい放題です。いったい何のために「強い軍隊」を持とうというのか、それで国民の安全が守られるのか、根本的に疑問です。

敵地攻撃能力の保持まで

 新しい「防衛計画大綱」の策定は、昨年の総選挙で自民党が「民主党政権で策定された防衛計画の大綱、中期防衛計画を見直す」と公約したのを受けたものです。民主党政権の「防衛計画大綱」も、日米軍事同盟強化と自衛隊増強の点では同じですが、自民党の「提言」は、「日米同盟のさらなる強化」を掲げる安倍政権の下で、「強靭な防衛力」の名でそれをさらに露骨に進めようということです。

 提言の特徴の一つは、従来政府が武力は持たないと決めた憲法の制約を言い逃れるため持ち出してきた、自衛隊は「専守防衛」という言い方を完全に避けたことです。日本をアメリカとともに「海外で戦争する国」に変える自民党の危険な狙いを浮き立たせています。二度と戦争は繰り返さないという国民の願いを踏みにじるものです。

 提言が「策源地攻撃能力」の保持に向けて検討を「開始し、速やかに結論を得る」としていることは大問題です。「策源地」とは、ミサイルなどで日本を攻撃する可能性がある相手国の基地のことで、「策源地攻撃」とは「敵基地攻撃」です。他国の領土に侵攻することであり、先制攻撃にもつながります。日本がこの方針を打ち出せば、周辺諸国の警戒心を呼び起こすことは必至です。

 提言が、この敵基地攻撃能力の保持とアメリカの「拡大抑止」とを結びつけているのはさらに問題です。「拡大抑止」とはアメリカが同盟国を守るためと称して核兵器の使用を前提にした政策です。アメリカの核兵器使用政策を前提にして日本の軍拡を進めようという提言の危険性は明らかです。

 提言が「日米安保体制の強化」をうたい、アメリカ政府と協議をはじめているガイドライン(日米防衛協力の指針)見直しに絡めて「集団的自衛権」の検討加速を持ち出しているのも見過ごしにできません。日本が攻撃されてもいないのに、自衛隊が武力を行使して米艦船を守り、アメリカ向け弾道ミサイルを迎撃するのは明白な憲法違反です。「検討」すること自体、許されません。

軍拡は国民の安全脅かす

 国民の平和や安全は軍事力だけで守られるものではありません。憲法で戦争を放棄している日本は何より平和的な外交で安全を確保すべきです。軍事力と日米同盟強化一辺倒の提言は、周辺地域での緊張を激化させ、国民の安全を逆に脅かすことにしかなりません。

 国民に消費税増税を押し付けながら、日米軍事同盟強化と自衛隊増強のために湯水のように税金を投入する政治を根本から転換することが不可欠です。


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