2013年5月16日(木)
高速増殖炉もんじゅ 廃炉しかない
停止命令で済まない数々の危険
原子力規制委員会は15日の定例会合で、日本原子力研究開発機構(原子力機構)の高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開停止を命令することを決めました。1万件近い機器の点検を怠っていたことが発覚したのを受けたものですが、もんじゅには運転再開停止ではすまない数々の危険性が指摘されています。もんじゅについて検証します。(間宮利夫)
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危険なナトリウム使用
高速増殖炉「もんじゅ」は、毒性の極めて強い放射性物質プルトニウムを燃料に使う原発です。使った以上のプルトニウムをつくりだせる「夢の原子炉」をうたい文句に政府が開発を進めています。しかし、水を冷却材に使う一般の原発と異なり、ナトリウムを冷却材に使うため、とりわけ大きな危険が伴います。ナトリウムは水や空気にふれると激しく反応するからです。
1995年12月、それを実証する事故が起きました。配管からナトリウムが漏れて火災が発生しました。2010年5月に14年5カ月ぶりに運転を再開したものの、制御棒の挿入が一時中断したり、運転中、警報が鳴り続ける綱渡り状態が続きました。同年8月には、重さ約3・3トンもの金属パイプが原子炉内に落下する事故が起こり、ふたたび運転ができなくなりました。
敷地内に活断層の疑い
もんじゅがある敦賀半島とその周辺には活断層が縦横に走っています。もんじゅの原子炉建屋の西側数百メートルのところには、長さが15キロでマグニチュード(M)6・9の地震を引き起こすとされる白木―丹生断層が走っており、敷地内の破砕帯(断層)は活断層の疑いがもたれています。原子力規制委員会の専門家チームがこれから調査し結論を出すことになっています。
ただでさえ危険なもんじゅが、地震で大きな被害を受けたら、どのようなことになるかは、東日本大震災で巨大な地震の揺れと津波に襲われた東京電力福島第1原発の事故を見れば明らかです。にもかかわらず、日本原子力機構は保安規定に基づいて行わなければならない1万件近くの点検を放置していました。
原子力規制委員会はもんじゅの使用停止を命じるにあたって、原子力機構の「安全軽視の体質」を指摘しました。しかし、それは今回始まったことではありません。95年のナトリウム漏れ・火災事故の際にも、前身の動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の安全軽視の体質が問題になりました。原子力機構に、もんじゅを運転する資格が無いことは以前から明らかでした。
破綻した核燃サイクル
それでも政府は毎年多額な予算をつぎ込み、運転再開に執念を燃やしてきました。先に高速増殖炉の開発を始めた欧米諸国が、技術的な困難さや危険性、経済性の問題からすでに撤退する中で、日本の突出ぶりは異常です。政府は、高速増殖炉を一般の原発の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを使う「核燃料サイクル」の柱として位置づけているからです。動燃や原子力機構の安全軽視の体質は、そのもとで醸成されたことは間違いありません。
核燃料サイクルのもう一つの柱である、青森県六ケ所村の「再処理工場」も同じです。未熟な技術を無理やりくっつけ、プルトニウムやウランだけでなく使用済み核燃料に含まれるさまざまな放射性物質(死の灰)を取り出す「放射能化学工場」で、原発以上に危険な施設です。建設と試験の各段階でトラブルが続き、完成時期を何度も何度も先延ばしせざるを得ない状況です。
再処理工場の施設の直下にも活断層が存在し、六ケ所村がある下北半島の東側の海底にある長さ約84キロの大陸棚外縁断層とつながってM8級の地震が発生する可能性が指摘されています。
安全を軽視したところにしか成り立たない核燃料サイクルはきっぱりやめるべきです。
国はただちに決断すべきです
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日本科学者会議福井支部 山本雅彦さん(敦賀市在住)の話 私たちは、プルトニウムを燃料に、ナトリウムを冷却材として使うもんじゅが、活断層が走る場所にあることの危険性を指摘してきました。問題だらけなのに、点検をまともにやっていなかったのですから、規制委員会が運転再開の停止を命令するのは当然です。しかし、それだけではいずれ運転が再開されることになりかねません。日本原子力研究開発機構にはもんじゅを動かす資格がないことが明らかになったのですから、国は、ただちに廃炉を決断すべきです。
行動のおかげ。ほっとしていますだよ
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もんじゅ君の話 ボク、高速増殖炉もんじゅにたいして、国の原子力規制委員会さんから停止命令が出ることが決まりました。今年度じゅうはきっとおしごとしなくていいので、ちょっとほっとしています。
1995年のナトリウム漏れ火災、10年の核燃料交換装置落下など、トラブルばかりで稼働実績がほぼないのに、あらたに1万カ所ちかい機器での点検もれがバレるなど、安全意識があいかわらず低いことをうけての処置です。
規制委員会がこんな命令を出せたのは、官邸前はじめ全国でデモ、抗議、署名、パブコメなど、地道な行動をつづけてきてくださったみなさんのおかげ。油断せず、この停止命令がハイロへの道につながるように、これからもよろしくお願いいたしますだよ。
※高速増殖炉「もんじゅ」をもじった非公式ゆるキャラ。“もんじゅ弁”の語りで、原発問題についてネットで発信しています。