2013年5月11日(土)
保育所に入りたい
少子化 なのに なぜ足りない
保育研究所 逆井直紀さんに聞く
認可保育所に入りたいのに入れない―。少子化といわれて久しいのに、なぜいまも保育所が足りないのでしょうか? 保育研究所の逆井(さかさい)直紀さんに聞きました。(堤由紀子)
認可保育所がなかなか増えない要因の一つは、国の三位一体改革によって、2004年度から公立保育所の運営費が一般財源化されたことにあります。
国の負担の拡充を
保育所の運営費や施設整備費は国庫補助金として手当てされてきました。ところが、この三位一体改革により、公立保育所分は地方交付税として手当てされ、何にでも使える一般財源となりました。しかも、地方交付税そのものが削減されてしまったのです。
そのため、保育所建設の優先順位が低い自治体では建設がすすみません。建設すれば、自治体は運営費を確保するために相当の支出を覚悟しなければならないからです。
認可保育所の施設整備費の補助や運営費の負担のあり方を見直して、国の負担を拡充すべきです。
加えて、公でやるのは非効率的だから官から民へというように、公立というものへの風当たりが非常に強まりました。公立保育所が減らされ、民営化が一気にすすみました。
それなら民間保育所に手厚いのかといえば決してそうではなく、施設整備費に十分な予算がついていません。近年では「安心こども基金」の中にある「保育所等緊急整備事業」を使うことができます。しかし、毎年ギリギリになって基金の延長が決まるということが繰り返されているため、自治体は見通しをもって保育所を増やすことができません。
また、自治体は未利用の公有地や国有地を活用したいのですが、高い賃料に悩まされています。無償または廉価で提供してほしいという願いは切実です。
需要つかんでない
もう一つの大きな問題は、国が保育需要をつかんでいないことです。
厚労省は01年から待機児童の定義を変えました。認可保育所に入れなくても、認可外施設に入れたり、育児休業を延長したりした家庭の子どもたちを待機児童として数えないという数字のマジックで、待機児童を少なく見せてきました。これにならって、自治体もそれぞれバラバラの基準で待機児童数を割り出しています。これでは認可保育所がどれだけ必要なのかわかりません。
待機児童問題は、1990年代後半から指摘されてきました。一方で雇用の構造改革をやっていたわけですから、共働きが増えることは目に見えていました。また、低年齢児の子育てに対する不安が大きくなっており、保育所は働くために子どもを預ける場というだけではなく、地域の子育てセンターの役割も求められています。
にもかかわらず、待機児童解消といいながら規制緩和しかせず、認可保育所をきちんと増やしてこなかったツケがきているのです。
認可保育所に入りたくても入れない待機児童数を一刻も早く把握するとともに、保育の質を高める努力を惜しんではならないと思います。