2013年5月1日(水)
きょうの潮流
暗黒の世が終わった戦後の日本。新しい国づくりのなかで、多彩な文化が花開いていきます。国民の生活と結びついた音楽をみんなで楽しむ、うたごえ運動もそのひとつでした▼民主的な音楽活動の息吹は、天皇制国家のもとで弾圧された痛苦の経験から生まれたものです。戦前、ジャズやポピュラーをはじめ外国音楽は禁止され、音楽家は「音楽挺身隊」として戦意高揚の演奏をすることが義務づけられました▼拒否すれば楽壇から締め出されて、演奏もできなくなってしまう時代。そのなかで勇気をもって戦争に反対し、自由をもとめたのが、うたごえを始めた関鑑子(あきこ)さんでした▼幼いころから声楽の才能を磨き、脚光を浴びた「美しいプリマドンナ」。慈善活動を通して社会の矛盾にめざめ、プロレタリア運動にかかわっていく彼女は「赤いプリマドンナ」と呼ばれるようになります。投獄された夫は若くして病死。しかし嵐に抗し、必死に生き抜きました▼関さんは戦後、再開されたメーデーのために地域や職場で歌を指導し、コーラスの結成に奔走します。労働者が解放の思いを表す場で指揮した関さんは思います。この50万人の群衆には100人の合唱隊が必要。うたごえの原点でした(『グレート・ラブ―関鑑子の生涯』)▼今年も、そのメーデーが開かれます。安倍政権が解雇の自由化をはじめ、労働者の生きる権利さえ奪おうとするなかで。いまを生きる人々の思いや願いを歌でつなぎ、みずからの要求を声にしてたたかう日です。