2013年4月26日(金)
漏れ続ける汚染水
原因候補多すぎ 東電 特定に混迷
福島第1地下貯水槽
高濃度の放射能汚染水が相次いで漏れた東京電力福島第1原発の地下貯水槽。汚染の拡大を止めるには、漏出した場所や原因の特定が急がれます。ところが貯水槽の安全性に自信があったはずの東電はいまになって、さまざまな理由で水漏れが起きうると言い出しました。 (本田祐典)
「現在のところ、(原因は)まだ明らかになっていません。原因の調査方法も含めて検討中でございます」
東電の廣瀬直己社長は23日、日本共産党の井上哲士参院議員の国会質問に、いまだに原因究明の有効な手段を見いだせていないことを示しました。
地下貯水槽の汚染水漏出が発表された5日深夜から、すでに20日余が経過。検証作業は迷走しています。
箇所確認できず
貯水槽内に設置されたプラスチック製の型枠や砕石は汚染され、取り除いて内側から漏水箇所を確認することができないと東電はいいます。汚染水の移送作業を終えると水で遮られていた放射線が強まるうえ、乾燥で放射性物質が飛散する恐れもあります。
東電は原因究明を推測に頼らざるをえないうえ、漏水を招いたと考えられる原因が多すぎて特定できないのが実情です。
貯水槽は合成樹脂の水漏れ防止シート2枚と、その外側に粘土質のシート1枚を重ねた簡単なつくり。水漏れ防止シートを重ねてつくる産業廃棄物処分場の工法を転用したもので、「とがったものがあたるとか、引っ張られるとか、破れる理由はさまざま」(処分場を所管する環境省の担当者)です。
東電は事故発覚の直後、漏水は貯水槽の上部だと考えました。シートが水圧で引っ張られて、貯水槽上部にあるパイプを通した穴の周辺に隙間ができたと推測したのです。
ところがパイプ周辺を点検しても異常は見つからず、事故発覚から1週間後の12日、原因究明は振り出しに戻りました。
さらに汚染水の移送が進んだ2号貯水槽では水位が約50センチになっても漏出が続き、別の貯水槽でも水位が約3メートルの状態で漏出が続いていることが分かりました(19日現在)。貯水槽の底部などで水漏れが起きる原因を考えなければならなくなったのです。
移送に6月まで
東電は現在、漏出の原因として有力な四つの候補を示しています。
このうち二つは、貯水槽底部のコンクリートが水圧などでひび割れてシートを損傷したというもの(図1)。
ほかに、貯水槽の傾斜した壁面に沿って漏水検知パイプ(孔)を通した部分にシートが水圧で押し付けられて変形した可能性(図2)や、壁面の四隅にあるシートの張り合わせ部分が損傷した可能性をあげます。
いずれの推測も、もっともらしいだけに、事前の危機管理の不十分さが露呈しています。東電はさらに再現実験や貯水槽の外側からの確認などで原因をしぼっていくとします。
原因究明も終わらず、全ての地下貯水槽から汚染水の移送を終えるのは6月上旬までかかる見込み。
貯水槽から地中に漏れた汚染水は最初に漏出が発覚した時点で約120トン(東電の推定)。その後の漏出について、東電は「発覚後にどれだけ漏れたのか、いまも漏れているのかは確認中」としています。