2013年4月25日(木)
「アベノミクス」の危険な暴走を許さず、消費税増税を中止し、国民の仕事と所得を増やす、本格的な景気回復を
2013年4月24日 日本共産党
市田忠義書記局長が24日に発表した日本共産党の提案「『アベノミクス』の危険な暴走を許さず、消費税増税を中止し、国民の仕事と所得を増やす、本格的な景気回復を」の全文は次の通りです。
日本経済は、大事な時期を迎えています。“デフレ不況打開のためにも賃上げを”が立場の違いをこえて大きな世論と運動になり、一部ですが賃上げや一時金を増額する企業が出始めています。しかし、安倍政権が「アベノミクス」などとしている「3本の矢」――「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」は、“賃上げによるデフレ不況打開”とは正反対に、国民の所得と消費を減らし、国民生活と日本経済に混乱と新たな危機をもたらす大変危険なものです。
「投機とバブル」で物価の値上げをはかるという異常な金融・経済政策は、国民の暮らしと日本経済に混乱と危機をもたらします。財政危機を悪化させる大型開発や大企業減税への新たなバラマキが始まっています。「成長戦略」の名での「解雇自由化」をはじめとする労働法制の規制緩和は、雇用不安を広げ、大きな「賃下げ圧力」となります。その上に、景気に大打撃の消費税大増税と、社会保障の大改悪です。
もともと安倍政権の「3本の矢」には「賃上げ」という考え方はありません。それにもかかわらず安倍政権が経済界に賃上げを要請するようになったのは、「物価が上がって給料が上がらなければ大変だ」という議論が起きるなど、国民の世論と賃上げへの運動があったからです。日本共産党も、政府に対して、財界に強く働きかけるなど賃上げに向けて行動することを求めてきました。安倍首相も「共産党の指摘もあり、政権の意思もあって、経済団体に申し入れた」と答弁しました。「アベノミクス」は、こうした国民の所得を増やして本格的な景気回復に向かう動きを根底からひっくり返してしまいます。
日本共産党は、「アベノミクス」の暴走を許さないために全力をあげます。同時に、批判にとどまらず、国民の所得を増やし、国内の需要と産業に力をつける、本格的な景気回復に向かう提案を行い、国民的な議論と共同を呼びかけます。
1、暮らしと経済を直撃する「アベノミクス」の「5本の毒矢」
「アベノミクス」で、「何となく景気が良くなりそう」というイメージだけが先行していますが、暮らしと景気の実態は引き続き深刻です。民放テレビ局の調査では、「安倍内閣が発足してから、暮らし向きの中で、景気がよくなっていると感じますか?」という問いに、77・7%が「感じない」と答え、「感じる」というのは16・7%です。「アベノミクスは自分たちのところにはまわってこない」という声も聞かれます。
「アベノミクス」の「3本の矢」は、景気を良くするどころか、国民の暮らしと日本経済に大きな被害をもたらします。安倍政権が国民に向かって放とうとしているのは、それにとどまりません。来年4月には消費税の大増税が実施されます。社会保障の大改悪にも着手しようとしています。「5本の毒矢」が暮らしと日本経済に襲いかかろうとしています。
(1)異常な金融緩和……「投機とバブル」での物価引き上げをめざす、「逆立ち」した「デフレ対策」
政府が「投機とバブル」をあおる異常で危険な金融・経済政策
安倍政権が日本銀行を巻き込んですすめている「大胆な金融政策」は、物価引き上げのために、政治が「投機とバブル」を意図的に引き起こそうとする、極めて異常で、危険な経済・金融政策です。
「デフレ不況」から抜け出すというのは、国民の所得が増え、消費と需要がのび、実体経済の景気回復のなかで、緩やかに物価も上昇していくことです。安倍政権がやろうとしていることは逆さまです。国民の所得と需要を増やす本格的な施策がないまま、金融的な操作で物価を上げようというのです。
日銀は、「資金供給量を2年で倍増して130兆円増やす」という金融緩和策を打ち出しました。しかし、これまでも大規模な金融緩和が行われてきましたが、実体経済が冷え込んでいるために、企業が設備投資や事業を拡大するために銀行からの融資を増やすことにはつながりませんでした。いくら銀行に資金を供給しても、その先の経済の現場に回らないのです。それを承知で「次元が違う金融緩和」(黒田日銀総裁)を行えば、この巨額の資金は実体経済にはまわらず、「投機とバブル」に向かうことになります。
大資産家には「巨額の富」、暮らしと経済は投機マネーの暴走で大きな災い
「投機とバブル」で物価上昇を狙っても、それは実体経済の裏付けのない、きわめて不安定なものです。株式、不動産、原油や穀物市場での過剰な投機は、物価の乱高下と国民生活への負担増を招き、かえって日本経済の不安定性を高め、本格的な景気回復を妨げることにしかなりません。すでに、食料品や水光熱費などの諸物価の値上がりが生活と営業を圧迫し始めていますが、国民の所得が増えないまま、物価が投機で上昇したら、国民の暮らしはめちゃくちゃになります。納入単価が上がらずに原材料費が上がれば、企業経営を圧迫し、中小企業を中心に賃下げと倒産・廃業の圧力となってしまいます。燃油の高騰が漁業と漁民を圧迫しています。
「巨額の富」がころがりこむ「チャンス」があるのは、ほんの一握りの大資産家や機関投資家、そして海外投資家です。最近の株高でも、わずか5カ月で100億円以上もの資産を増やした企業経営者・オーナー株主が数十人にのぼり、経営者とその家族で数千億円も資産が増えた場合もあります。ヘッジファンドなどの海外投資家も、東証の株式売買の6割を占めており、株高の恩恵を受けています。為替市場の円安でも、ジョージ・ソロス氏のファンドが10億ドルの利益を上げたと発表しています。まさに、「アベノミクス」の「成果と効果」を最大限に享受しているのです。その一方で、日本の家計の金融資産約1550兆円(2012年末)のうち、株式・出資金の割合は6・8%にすぎず、大多数の家計には恩恵はなく、預貯金の利子はさらに少なくなります。
しかも、バブル経済は長続きせずにはじけることが宿命です。いったん破裂したら、リーマン・ショック後の日本や世界で起きたように、大リストラや賃下げが襲いかかり、失業と倒産の嵐に見舞われてしまいます。真面目に働き、ものづくりをすすめ、まともな商売にはげむ国民や企業は、「投機とバブル」で翻弄(ほんろう)されるだけです。
こんな危険な道の先に「日本経済の復活」はありません。
(2)財政政策……大型開発や大企業減税への自民党型バラマキの「復活」
「アベノミクス」では、「機動的な財政政策」といって、国民に向かっては「財政危機」を言いながら、「国土強靭(きょうじん)化」の名で、「公共事業に10年間で200兆円」を注ぎ込むと公言し、大都市圏環状道路や国際コンテナ戦略港湾などの不要不急の大型開発をすすめています。また、今年度予算案では、研究開発減税や投資減税など、もっぱら大企業を対象にした2000億円に及ぶ新たな減税を盛り込んでいます。
自民党政治が行ってきた大型開発も大企業・金持ち減税も、景気回復にはつながらず、莫大(ばくだい)な借金を残しただけでした。日本の財政を危機的状況に陥れた「自民党型のバラマキ」が「復活」しています。
異常な金融緩和は、借金財政に拍車をかけようとしています。日銀は、2年間で新たに約100兆円の国債を買い入れるとしていますが、この数年間の国債新規発行額は50兆円程度です。2年続けて日銀だけで“丸ごと買える”規模になります。また、財政規律を守るために設定していた国債の保有額や種類等の「歯止め」も「停止」してしまいました。
(3)「成長戦略」……「名ばかり正社員」「解雇自由化」「サービス残業合法化」など雇用ルールの弱体化
安倍政権が「成長戦略」と言いだしているものの中でも、とりわけ深刻な被害を国民の暮らしと経済にもたらすのが、労働法制の「規制緩和」、雇用のルールのいっそうの弱体化です。政府の「規制改革会議」や「産業競争力会議」では、派遣労働の拡大とともに、正社員の解雇規制の緩和や、労働時間管理の柔軟化、「限定正社員」制度の導入などの検討がすすめられています。
「多様な正社員」の名目で、地域や職種、労働時間を限定した「正社員」をつくり、「限定正社員」が所属している事業所や業務がなくなれば整理解雇できるというもので、「いつ解雇されるかわからない」不安定雇用の「名ばかり正社員」です。一方で、「限定なし」の正社員は、労働時間規制をはずし、「残業代ゼロ」のホワイトカラー・エグゼンプションを導入しようとしています。
自公政権が労働法制の規制緩和で、低賃金で不安定な非正規雇用を増やしたことが、正社員を含めた全体の賃金を引き下げ、働く人の心身の健康を損なうような長時間・過密労働を深刻にしました。政府の「労働経済白書」でさえ、「国内需要の大きな割合を占める家計消費を押し下げている最大の要因は所得の低下である。……それは主に非正規雇用者の増加によるもの」(2012年版)としています。
安倍政権は、この反省もなく、「解雇自由化」や「サービス残業の合法化」などの雇用ルールの弱体化を正社員にも広げようというのです。「こんなことをやれば、日本の企業全部が『ブラック企業化』する」という批判も起きています。「成長戦略」どころか、雇用不安を広げ、賃下げの圧力を強化する、「デフレ不況」促進策です。
(4)消費税大増税……暮らしも景気も破壊する無謀な増税計画
「機動的な財政政策」の大前提になっているのが、消費税大増税です。
消費税は、来年4月に8%に、再来年10月には10%に引き上げられようとしています。予定通りに実施されれば、消費税増税だけで13・5兆円、その他の増税や社会保険料の値上げなどを合わせれば20兆円もの負担増になります。
企業経営にも大打撃です。7割の企業が「業績への悪影響」があるとし(帝国データバンク調査)、増税分を価格に「転嫁できない」事業者は、売上高1000万〜1500万円の小規模事業者だと71%、1億〜2億円の事業者でも50%に達します(日本商工会議所などの調査)。
1997年に消費税増税などの「9兆円負担増」を政府が強行し大不況に陥りました。当時は、働く人の平均年収は増えていましたが、今は、この4年間だけでも21万円も減っています。そこに20兆円もの負担増を国民に押しつけるという、あまりにも無謀な増税計画です。
(5)社会保障の大改悪……負担増と生活不安の増大、貧困と格差など、景気を悪化させ、社会不安を広げる
日本の社会保障は、予算削減と制度改悪が連続的に行われた結果、「年金空洞化」「医療崩壊」「介護難民」そして「保育難民」と、あらゆる分野で危機的な状況が生まれています。
それにもかかわらず、安倍政権は、いっそうの切り捨てと改悪をすすめようとしています。安倍首相が、医療費の70〜74歳の窓口負担を2倍に値上げすることを国会で明言し、年金額の削減や生活保護の切り捨てをすすめています。さらに、政府の財政制度等審議会などで、年金の支給開始年齢を68〜70歳に先延ばしする、かぜ薬、しっぷ薬などを保険から外す、「要介護3」未満は、介護サービスをすべて保険外(全額自己負担)にするなど、これまでにない大改悪が検討されています。
2、国民の所得を増やし、本格的な景気回復の道を――4本柱でデフレ不況の打開策を提案します
《行きづまり、失敗を繰り返してきた古い自民党政治からの転換を》
安倍政権の経済政策は、「アベノミクス」などと新しい装いをこらしていますが、その一つ一つを見れば、消費税増税、社会保障の削減、ゼネコン型の大型開発、大企業や金持ち優遇の減税、「規制緩和」の名による雇用のルール弱体化と、どれも古い自民党政治そのものです。根本にあるのは、財界・大企業の目先の利益確保を優先し、国民の暮らしや日本経済全体の動向は二の次三の次という政治です。この政治が、国民の所得を減らし、消費と需要が落ち込み、さらに所得が減っていくという「デフレ不況」に陥れたのです。その反省も総括もできない安倍政権は、「投機とバブル」だのみという「禁じ手」まで繰り出し、国民生活と日本経済をいっそう危険な道に引きずり込む、無責任で無謀な金融対策に頼らざるを得ないところまで行きづまっています。
いま、日本経済に求められているのは、アベノミクスのような「投機とバブル」だのみの虚構の「景気浮揚」ではなく、実体経済にしっかり裏打ちされた、本格的な景気回復の道です。日本経済の6割を占める家計を温め、所得と需要を増やして「デフレ不況」の悪循環から抜け出すことを基本にした経済・産業政策、ここにこそ国民の暮らしと企業の経済活動にしっかりと軸足を置いた景気対策があります。
《4本柱でのデフレ不況打開策――日本共産党の提案》
日本共産党は、「経済提言――消費税大増税ストップ! 社会保障充実、財政危機打開の提言」や「賃上げ・雇用アピール――賃上げと安定した雇用の拡大で、暮らしと経済を立て直そう」を発表していますが、これらの内容も踏まえ、「アベノミクス」への対案として、景気回復への本道をすすむための「4本柱でのデフレ不況打開策」を提案します。
第一の柱――賃上げと安定した雇用の拡大で、働く人の所得を増やす
内部留保の一部を賃上げに……減り続けてきた国民の所得が増える方向に向かってこそ、デフレ不況を打開することができます。そのカギは、10年間で100兆円近くも増え、260兆円にまで膨れ上がっている大企業の内部留保の一部を、賃上げや正社員化として、それぞれの企業が使う方向に動きだし、そこを「突破口」に経済の好循環につなげることです。
“内部留保を使って賃上げを”という声は、日本共産党だけでなく、大きく広がりました。少なくないエコノミストや企業経営者からも「賃上げをしないと消費不況から抜け出せない」「企業内部の余剰資金を動かすべきだ」という指摘がされ、安倍内閣も「内部留保が賃金に回ることは、日本の経済が活気づくためにも重要な要素の一つ」(麻生副総理 3月8日 衆院予算委員会)としています。
政府の雇用政策の転換で、賃上げの波を非正規と中小企業に……賃上げの動きを、さらに多くの業界と企業に、非正規雇用や中小企業へと広げていくことが、本格的な景気回復への大きな流れをつくることになります。
労働者派遣法の抜本改正をはじめ、非正規雇用への不当な差別や格差をなくし均等待遇をはかり、派遣や契約、パートなどで働く労働者の賃上げと労働条件の改善をすすめます。
最低賃金の引き上げは、政府が直接できる賃上げ策であり、消費を伸ばし、売り上げを増やすという地域経済の好循環をもたらします。それには中小企業への十分な対策が必要です。アメリカでは、5年間で最低賃金を時給200円引き上げた時に8800億円の中小企業支援を行いました。フランスは3年間で2兆2800億円です。日本は2011〜13年度の3年間に111・7億円にすぎません。抜本的な引き上げが求められます。
国や自治体と受注する事業者との間で結ばれる契約に、生活できる賃金など人間らしく働くことのできる労働条件を定める公契約法・条例を制定します。
いま、政府自身が賃下げを促進し、デフレ不況を加速するような政策は絶対にとるべきではありません。公務員賃金の引き下げは、それだけで1兆2000億円ものマイナスの経済効果になり、何よりも、民間賃金の引き下げに連動します。
第二の柱――消費税増税を中止する――財源は消費税に頼らない「別の道」で確保することを提案しています
消費税増税中止こそ、暮らしと経済への責任ある態度
消費税増税と社会保険料値上げなどを合わせて20兆円もの負担増を一気に国民にかぶせるなどというのは、政府が自らすすめる大不況推進策です。
安倍首相をはじめ増税勢力は、「社会保障のため」とか「財政のため」と言いますが、その口実は、ことごとく崩れています。社会保障は、大改悪が消費税増税と同時にすすめられようとしています。「財政のため」といいながら、消費税増税をあてこんだ自民党型バラマキ財政がすすんでいます。
そもそも、いま、消費税を増税しても、景気を悪化させ、国民の所得、企業の利益が減れば、税収全体は減ってしまいます。1997年の消費税増税の時に、消費税の税収は増えましたが、法人税や所得税などの他の税収がそれを上回る減収になり、税収の総額は、90兆円から76兆円に14兆円も減ってしまいました(1996年度と2010年度の比較)――この歴史的事実を今こそ直視すべきです。
消費税を増税し、国民に多大な負担を押しつけ、企業活動に困難を持ち込み、その挙句に税収を減らし財政を悪化させてしまう……何のための増税かが問われます。
将来の税制のあり方についてはいろいろな意見や見解はあっても、こんな消費税増税はいまやってはならない、無謀な増税は中止する、というのが国民の暮らしと日本経済への責任ある態度ではないでしょうか。
日本共産党は、消費税に頼らない「別の道」を提案しています
日本共産党は、消費税に頼らない「別の道」で、社会保障の財源を確保し、財政危機を打開する道を提案しています。
税金は、所得や資産など能力に応じた負担の原則で集める……税制のあり方を、所得や資産に応じて負担するという「応能負担の原則」に立って改革します。
社会保障の財源は、国民全体が、力に応じて負担をしていくことが必要です。しかし、現在の税制には、富裕層や大企業が恩恵を受ける特別の減税制度があり、「所得が1億円を超えると所得税の負担率が下がる」「法人税の実質負担率は、大企業は10%台で中小企業の負担率より軽い」という逆転現象が起きています。いちばん力のある人たちが、その役割を果たしていないのです。この不公平な税制の改革こそ、最優先の課題です。
国民の所得を増やす経済の立て直しで財源を確保する……税財政の改革だけでなく、税収そのものが増えていくような経済の改革で、財源を確保することも必要です。7割を超える中小企業が赤字で法人税を払えないとか、国民の所得が減り続けるという状況を改善しなければ、財政再建もできません。賃上げをはじめ国民の所得を増やす「デフレ不況」打開策は、財政再建のためにも必要です。
この二つの改革は相乗効果を発揮します。「応能負担の原則」に基づく税制の改革は、消費税増税と違い、景気回復に打撃を与えません。逆に、経済が良くなればなるほど、税収が増えていき、さらにその再配分を通じて消費と需要を活性化することができます。
日本共産党は、二つの改革を通じての財源の見通しも先の「提言」で発表しています。その骨格は、大型開発、軍事費、政党助成金など無駄づかいにメスをいれる歳出改革で3兆円程度、不公正税制改革で8兆〜11兆円、景気回復後の所得税の累進性を強化する改革で6兆円程度、合わせて18兆〜20兆円程度の財源を確保します。さらに、健全な経済成長を実現すれば、10年後にはその他の税収も20兆円の自然増が見込まれます。あわせて40兆円程度の財源となります。
第三の柱――現役世代も高齢者も安心できる社会保障に
しっかりした社会保障制度をつくり、憲法に定められた生存権、国民の権利を守るのは国の責任です。
日本共産党は、安倍政権がすすめようとしている、いっそうの社会保障大改悪を許さないため全力をあげます。そして、あらゆる分野で危機にひんしている日本の社会保障を再生し、充実させるために、先の「提言」で財源を具体的に示しながら、2段階で充実させることを提言しています。
第1段階――崩された社会保障を再生する……まず、小泉「構造改革」路線以降、減らされ、崩され続けてきた社会保障の再生をすすめます。
・年金――年金削減を中止し、“減らない年金”を実現する。低年金の底上げをすすめ、無年金・低年金の解決に踏みだす。
・医療――医療費の窓口負担の引き下げ、病院閉鎖、医師不足などの医療崩壊を立て直す。
・介護――特養ホームの待機者を解消する。介護負担を軽減する。
・認可保育所を増やし、待機児童をゼロにする。
・障害者の暮らしと権利を守る新法を制定する。
・雇用保険の拡充、失業者への再就職支援と生活援助を強化する。
・生活保護の排除と切り捨てをやめる。
第2段階――さらに先進水準にすすむ……最低保障年金制度の創設や窓口負担ゼロの医療制度など、すでにヨーロッパなどで到達している先進水準の社会保障を実現します。あわせて、学費の無償化、教育・研究予算の抜本的充実もはかります。
社会保障の充実は、景気の本格的な回復にも大きな力……社会保障制度がしっかりと国民の暮らしを支えてこそ、生活不安を軽減し、国民の消費マインドも温まります。医療や福祉、保育などで新しい仕事と雇用も生まれます。
認可保育所を整備し、待機児童を解消することは、次代をになう子どもの成長と発達への国、自治体の責任です。同時に、安心して働ける体制を整えることは、働く人と所得を増やす「景気対策」としても力を発揮します。
政府がすすめている年金額の削減は、これから3年間で総額1兆3000億円もの所得と消費を減らします。「自己責任」「家族責任」の押しつけは、「親の介護で仕事を辞めざるをえない」など、現役世代の生活も圧迫しています。
第四の柱――内需主導の健全な成長をもたらす産業政策に
働く人間を大切にして、ものづくりと産業の力を伸ばす……大企業を先頭に、売り上げが減少しても利益を確保するために、あるいは「国際競争力強化」のために、人件費の削減や納入単価の引き下げにたよる「コスト削減競争」に走ってきましたが、それが働く人の所得を減らし、「デフレ不況」の悪循環をもたらしました。それぞれの企業にとっては「合理的」に見えても、日本の大企業全体がやれば経済全体を不況にしてしまうのです。
働く人間の「使い捨て」は、日本の産業、企業の力もそいでいます。非正規への置き換え、正社員への無法な「退職強要」など、働く人間をモノのように「使い捨てる」やり方は、仕事へのモチベーションも、技術力も低下させています。「優秀な人材ほど逃げていく」とさえ言われ、技術者の韓国など外国企業への流出も危惧されています。
1990年代以降、「規制緩和」の名で、国民の雇用と暮らし、営業を守るルールを崩したことが、出口のない「コスト削減競争」を促進しました。個々の企業の見識と努力も問われますが、政治が社会的なルールをつくり、人間らしく働ける経済社会の仕組みをつくることが求められています。働く人間を大切にすることは、産業の発展の源泉であり、消費と需要を支え、日本経済のしっかりした基盤となります。
「選択と集中」から転換し、中小企業全体を視野に入れた振興・支援策に……これまでの経済・産業政策は、「大企業が成長すれば日本経済がよくなり、いずれ中小企業もよくなる」という立場でした。中小企業への「単価たたき」や理不尽な「発注打ち切り」も野放しにされてきました。しかも、この間の中小企業支援策は、「選択と集中」という名で、多数の中小企業を政府の振興策から排除し、切り捨てるものになっています。
企業数の99%、雇用の7割を支えている中小企業が元気になってこそ、日本経済は活気づきます。中小企業全体を視野にいれ、企業集積の力、町工場の技術力をはじめ、これまで蓄えてきた力がもっと発揮できる振興・支援策をすすめるべきです。
中小企業への商品開発、販路開拓、技術支援、後継者育成をはじめとする振興策と、大企業の優越的地位利用や金融機関の貸し渋り・貸しはがしなどから中小企業の経営を守る適切な「規制」を、中小企業政策の“車の両輪”としてセットで行うことも必要です。大企業の単価たたきや金融機関による貸しはがしを放置したままで、いくら振興策をやっても“穴の開いたバケツ”に水を注ぐようなことになってしまいます。
自然エネルギーの開発と本格的普及を……自然エネルギー(再生可能エネルギー)が、世界の電力に占める割合は、2011年の20%から、2050年には51〜71%になる(世界エネルギー機関)とされ、自然エネルギーへの投資額も、この7年間に6倍になっています。
この成長著しい分野で日本は立ち遅れています。自然エネルギーの発電施設容量(ダムなどを除く)は、世界で7位です。太陽光では、2004年までは導入量で日本が世界一でした。太陽電池の生産量も、2007年まで25%と世界トップのシェアを持っていたのが、2010年には10%と4位に転落しました。世界の急速な伸びに追いつけないのです。
原発即時ゼロの政治決断を行うとともに、原発の維持・推進に偏重したエネルギー政策を転換し、自然エネルギーに思い切ってシフトしていくことが、産業政策としても、いよいよ重要になっています。国内で自然エネルギーの実用化と普及の速度が上がり、日本での市場が広がってこそ、技術力も高まり、産業として発展し、国際競争力も強くなります。また、エネルギー自給率を4%から大きく引き上げ、“資源のない国”という日本の経済、産業の条件を変える力にもなります。
基礎研究を重視し、科学技術、学問研究の基盤を強化する……日本は数々の国際的水準の研究成果を生んできましたが、それは、しっかりした基礎研究、すそ野の広い学問研究の基盤があってこそ発展します。日本の産業と企業のイノベーション(技術革新)にとっても、その基盤強化が必要になっています。ところが、大学や研究機関の予算が削られ続け、その基盤が危機にひんしています。若手研究者や研究支援者の雇用はきわめて不安定で、ノーベル賞を受賞した山中伸弥さんのiPS細胞研究所でも9割が非正規雇用です。国の学問研究予算の増額と研究者、研究支援者の雇用の安定をはかり、「目先の成果」に振り回されずに学問研究をすすめられる体制をつくることが必要です。
農林漁業を、日本の基幹産業、地域経済の柱として振興し、“食と農”を破壊するTPPに反対する……地球の気候変動による農業生産の不安定化や、途上国の経済成長・人口増にともなう需要急増など、食料をめぐる国際情勢は激変しています。農林漁業を「基幹的な生産部門」として位置づけ、「食料自給率の向上」をはかることは、国民の命と生活への政治の責任です。39%まで落ちてしまった食料自給率を50%に引き上げることを当面の目標にすえて、価格・所得保障、後継者支援、生産者と消費者の連携強化をはじめ農林漁業の振興に国をあげて取り組む必要があります。
同時に、農林漁業は、洪水防止や国土・環境保全など、国土と安全を守る、かけがえのない多面的機能を有しています。地域経済という面でも、農林水産物を原料にする地域の食品加工業者、生産者から消費者まで運ぶ輸送業など、重要な役割を持っています。中小企業とともに、農林漁業の振興は、地域経済活性化の重要な柱です。
安倍政権が推進しているTPP(環太平洋連携協定)は、日本経済の成長につながるどころか、農林水産業、医療、雇用、食の安全など日本経済を土台から壊すとともに、「非関税障壁の撤廃」の名でアメリカ型のルールを押しつけられ、経済主権も売り渡してしまうことになります。
“食と農”は壊滅的な打撃を受け、政府の試算でも、農漁業の生産額は約3兆円も減少し、食料自給率は27%に激減します。地球規模での食料不足が大問題になっているときに、食料の大半を外国に頼る国にしてしまうのは、まさに「亡国の道」です。
非関税障壁の撤廃という名目で、混合診療や医療への株式会社の参入、公共事業の「地元優先発注」の撤廃、食品の安全基準や自動車排ガス規制の大幅緩和などが標的にされています。米国との事前協議では、簡易保険の新商品凍結、日本車への米国の輸入関税は現状維持、食品安全基準の緩和など、米側の要求を「丸のみ」させられ、安倍首相が「守るべき」と言った日本側の「聖域」は何の保証もないという「入り口」から大幅譲歩しています。本交渉になればさらに重大な結果になることは明らかです。
日本共産党は、幅広いみなさんとの共同の力で「亡国のTPP」を阻止するために全力をあげます。
《人間らしい暮らしを保障する“ルールある経済社会”に向けて》
ほんとうに強い経済には、安定した雇用を守り、国民の所得を減らさないシステムが必要です。日本共産党は、大企業を敵視する立場でも、大企業の利益が少なくなればいいという立場でもありません。“ルールなき資本主義”をただし、大企業が日本の経済社会への社会的責任をきちんと果たすルールを整備すること、それを政治の責任ですすめていこうと主張しているのです。ここに掲げる「4本柱のデフレ不況打開策」は、持続可能な経済の成長、発展に向けた“ルールある経済社会”への第一歩となるものです。
いま、メディアが「アベノミクス」を持ち上げ、「リスクはあるけど何もやらないよりはまし」というような乱暴な議論さえまかり通っています。日本共産党は、「アベノミクス」の危険性を明らかにするとともに、本格的な景気回復に向かう「デフレ不況打開の提案」を行い、国民的な討論と共同をすすめます。そして、広範な国民、諸団体のみなさんと協力して、「デフレ不況」の打開という国民的な課題に全力をあげます。