2013年4月23日(火)
ボストンテロ容疑者
市民? 戦闘員? 論議
【ワシントン=山崎伸治】米東部マサチューセッツ州ボストンで起きた爆弾テロ事件のジョハル・ツァルナエフ容疑者(19)の取り調べをめぐり同容疑者を「米国市民」とするか「敵性戦闘員」とするかが議論となっています。米人権擁護組織は容疑者としての権利を守るよう主張。21日放映の米テレビの討論番組でも取り上げられました。
ボストン市警察のデービス長官はCBSテレビの討論番組で「容疑者は重体だが安定している。現在のところ、尋問ができない状況だ」と説明。当面取り調べはできないもようです。
人権擁護団体「全米市民的自由連盟」(ACLU)のロメロ事務局長は20日、今回の事件に関連し、すべての刑事被告人には「ミランダ権利」が保障されねばならないとの声明を発表しました。「ミランダ権利」とは、黙秘権や弁護士の立ち会いを求める権利など容疑者が持つ権利。尋問の前にはその告知が義務付けられています。
ところが被疑者が「敵性戦闘員」の場合、または米国市民であっても「公共の治安」に関わる場合、告知は不要。これらの権利は保障されないことになります。ジョハル・ツァルナエフ容疑者はロシア・チェチェン共和国出身ですが、現在の国籍は米国です。
21日放映のABCテレビの討論番組で共和党のコーツ上院議員は、同容疑者に「海外のテロ組織とのつながりがあるかどうか分かるまで、敵性戦闘員とすべきだ」と指摘。亡くなった兄のタメルラン・ツァルナエフ容疑者が2012年にロシア南部ダゲスタン共和国を訪問していたことを挙げ、「そこはムスリム地域だ。その時に過激派となったかもしれない」とまで述べました。
一方、NBCテレビの討論番組で同党のロジャーズ下院議員は、同容疑者が「米国市民で、憲法のあらゆる保護を受ける」としながらも、「最初からミランダ権利を告知するというのはとんでもない考えだ」と表明。「公共の治安」を理由に告知せずに取り調べを行うべきだとの考えを示しました。
今回のテロ事件の容疑者2人がチェチェン出身であることが判明して以来、外国のテロ組織とのつながりを示唆する報道が相次ぎ、“先走り”を懸念する声もあります。