2013年4月19日(金)
宮城 被災地の保健師103人の声
日常のつながり重要/増員を
東日本大震災で自らも被災しながら、避難所や仮設住宅で被災者の健康相談や救護活動などにあたった保健師たち。どう立ち向かったのか。「被災地の保健師100人の声」プロジェクトによるアンケートがまとまり、仙台市内で報告会が行われました。
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調査にとりくんだのは、現役・OGの保健師や医療・保健関係者など。震災の教訓を今後に生かしたいと、津波の被害を受けた宮城県13市町の保健師と県保健所保健師を対象に実施(昨年6〜9月)、計103人(うち課長など職責者19人)が回答しました。
保健師たちは災害発生直後から避難所への誘導、救護などを行い、避難所の巡回、健康チェックや要支援者対応、衛生管理と感染症予防などにあたりました。
「現在でも悩み」
回答ではとくに医療などの調整、重複した支援の整理、さまざまな情報を冷静に判断する力が求められたとし、「各課や関係機関の連携」、市町では少ない看護職として「保健師の専門性を発揮できる体制づくり」の必要性など多くの課題が記述されています。
仮設住宅居住者の現状と今後では、経済格差による健康問題の顕在化、男性のアルコール問題、高齢者の認知症の増加などの指摘が多く、避難所や仮設住宅を人権の視点で見たとき、31人が「問題あり」と答えました。
保健師自身では6割が「(震災当時)精神的な危機を感じた」と答え、「現在も精神的に悩んでいる」が12人。「常に『もっとやれることがあったのでは』という思いがつきまとう」などの悩みも率直に書かれています。
震災を通して保健師としての仕事をどう感じたか。「日ごろの保健活動を通じて地域や人を知り、人と人のつながりをつくることが重要」「ふだんできていないことは緊急時にはできない」「総合的に生活を見る力が求められる」などの記述が多く、悩みを抱えながらも仕事に誇りを持って立ち向かった姿が浮かびます。改善点として42人が保健師の増員を要望しました。
「受援」のしくみ
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県の保健所の統廃合が進められ、保健所の機能が弱まっていたところで被災し、現場では「保健所の姿が見えない」との声も出ました。保健所が本来の機能をとりもどし、市町村と日ごろからどう連携し、地域全体の問題を共に考えていくのかなど多くの課題が浮かび上がりました。
震災直後に南三陸町に支援に入った高知県中央東福祉保健所の田上豊資所長は、その経験から災害時に支援を受ける側としての「受援」のしくみづくりを地元の市町村と共に始めたと紹介しました。
調査を呼びかけた村口至・元坂総合病院長は、「超広域的に地域が破壊されたときに大切なのは公衆衛生活動でした。保健師たちの体験を生かすことが復興にとって欠かせない」と話します。
同プロジェクトは「保健師からの10の提言」を発表。▽災害対策本部に保健師(職責者)を参加させる。保健師の職能性を重視する▽震災時の保健所の役割を抜本的に見直し、保健所長の権限を強化する▽保健師の地域担当制を重視した保健師業務への見直しをする、などを関係当局に提起していく予定です。