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2013年4月13日(土)

主張

イレッサ最高裁判決

国は薬害被害の教訓に学べ

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 抗がん剤イレッサの副作用で死亡した患者の遺族らが被害救済などを求めた裁判で、最高裁は遺族らの訴えを退けました。国の承認直後から多数の死者が出たのに、“落ち度はない”とする国と企業の言い分を追認した、不当きわまる判決です。裁判が終わって、国と企業は責任を免れたなどと受けとめることはあってはなりません。国は深刻な薬害被害から教訓を引き出し、その反省のうえにたって、命を最優先にする安全な医薬品行政に力を注ぐべきです。

なぜ「夢の新薬」で命が

 肺がんの抗がん剤イレッサは2002年7月に、世界に先駆けて日本で承認されたものです。販売直後から致死性の強い間質性肺炎の副作用を発症する患者が続出し、850人以上が命を落とす深刻な被害を引き起こしました。

 安全な「夢の新薬」と大々的に宣伝されていた薬によって、なぜ家族の命が奪われなければならなかったのか。その責任はどこにあるのか。遺族たちが裁判に踏み切った、やむにやまれぬ思いです。

 争点は製造・輸入元の製薬会社アストラゼネカも監督官庁の厚生労働省も、イレッサが重大な副作用を引き起こす薬であると認識していながら、その危険性をきちんと警告していたかどうかです。

 製薬会社も国も、薬に添付した医療機関向けの説明書に記載したから対応に欠陥はないといい続けました。しかし、死者が続出する事態を受け、販売からわずか3カ月後に急きょ、説明書に「警告欄」を新設して訂正したように、最初の対応に不備があったことはあまりにも明白です。

 承認直後の2年半に死者が557人と集中したことは、最初の記載では危険性がほとんど周知されなかった事実を裏付けています。だからこそ一審の東京と大阪の地裁は、国と企業の対応の欠陥を認める判決を言い渡したのです。

 ところが東京と大阪の高裁が十分な審理もなく国と企業の言い分を全面的に容認したのに続き、最高裁は2日に国に責任なしと決定し、12日には企業も免罪しました。安全をないがしろにした国と企業の責任を不問にした最高裁判決は、国民の命と健康を守る立場を完全に放棄したものです。

 イレッサが申請からわずか5カ月というきわめて異例のスピードで承認されたのは、新薬の「迅速審査」のモデルケースという位置づけがありました。8年余りにわたる訴訟は、国の医薬品行政のあり方を根本から問うものでした。

 病に苦しむ患者が有効な新薬を迅速に使えるようにすることは当然です。しかし、「迅速さ」のために安全が置き去りされることは絶対にあってはならないことです。

 医薬品には、安全性に欠陥がある製品がひとたび市場に出回れば、生命にかかわる重大な被害を広範囲で引き起こす危険性があることを、国も医薬品企業も銘記しなければなりません。安全軽視の「規制緩和」は許されません。

救済制度の創設急げ

 販売中の医薬品をめぐる初めての薬害訴訟は多くの困難を伴いましたが、イレッサの危険性を社会に広く知らせ使用に歯止めをかけました。抗がん剤の副作用救済制度の創設について政府の検討も始まっています。「命の重さ」を訴え続けた遺族らの願いに応える政治の実現が急がれます。


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