2013年4月12日(金)
生活保護減額根拠疑問 物価下落理由
家電 買ったかのように計算
研究者ら試算
物価下落を理由に生活保護費を減らす政府方針の根拠とされた物価指数は、生活保護世帯の実態を反映していないことが分かりました。山田壮志郎日本福祉大准教授らの調査によるものです。
厚生労働省は、生活保護費のうち食費など生活費にあたる生活扶助費を8月から3年で670億円引き下げる方針で、うち580億円が物価下落分としています。同省は、消費者物価指数(CPI)から家賃など生活扶助の対象ではない品目を除いた独自の指数を使い、2008年と11年の物価を比べてマイナス4・78%と算出。生活扶助費引き下げの根拠にしました。
山田准教授は、CPIのもとになる費目のうち電気製品の物価下落が大きく、物価全体の下落に影響していることに着目。生活保護世帯は、はたして物価下落の恩恵に浴しているのか、パソコンやカメラなど電気製品の支出について全国175の生活保護世帯にアンケートを行いました。
その結果、電気製品21品目の購入状況では▽生活保護受給後に購入したことがない人が90%以上に上る品目が多い▽4分の3の人は買ってもせいぜい2品目と分かりました。(グラフ参照)
同氏の試算では生活保護利用後の生活扶助費総額に対する電気製品購入額の割合は平均で0・82%。これに対し同省は生活保護世帯の電気製品購入額の割合を4・2%としていて実態とかけはなれていました。「生活保護利用者の立場からいえば、自分と関係ない品目が影響しているデフレを理由に、生活扶助費が削られる結果になる」といいます。
同氏は、低所得層の消費実態を踏まえた筑紫女学園大学の池田和彦教授の試算も紹介。同教授らが下位20%の所得階層の実際の消費支出に基づいて算出し直すと物価下落率は1・67〜2・81%ほどだといいます。
山田氏は、「生活保護利用者の消費構造を反映させれば下落率はもっと小さくなる。削減額は300億円くらい多いのではないか」と指摘。「そもそも物価下落と生活扶助の関係は、この間の社会保障審議会生活保護基準部会でもまったく論議されてこなかった。物価下落を根拠とした生活扶助基準の引き下げを撤回すべきだ」と批判しています。
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