2013年4月10日(水)
宮城・石巻 仮設住宅もう“老朽化”
ゆがむ床 畳にカビ
「やっと落ち着いたのに」
仮設住宅で暮らす東日本大震災の被災者は、いまなお約11万人。移転先の造成や公営住宅建設に時間を要し、避難生活の長期化は避けられないのが実情です。しかし、仮設住宅では入居当初からの不便に加え、はやくも“老朽化”が問題になっています。(本田祐典)
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宮城県石巻市の仮設住宅に親子3人で暮らすAさん(56)は、疲れきった様子で語ります。「小学4年の長男をここで育て続けていいものか。仮設を抜け出す資金もなく、悩んでいる」
壊れ始めた
仮設住宅は劣悪な住環境が問題になって、断熱材や風呂の追いだき機能などの追加工事が繰り返されてきました。建設からこれまでに1戸あたり約744万円(宮城県内の平均)を費やし、ようやく工事の音がやんだのは昨年秋のことです。
しかし、「やっと落ち着いた」と思ったのもつかの間でした。粗雑なつくりの仮設住宅が老朽化し、部屋のあちこちが壊れ始めたのです。
「とくにひどい」とAさんが案内したのは、南向きの一室です。
部屋に入るとすぐに、つんとした強い臭いが鼻をつきました。
Aさんが指さした先をのぞきこむと、畳に白カビがびっしり。湿気や結露などにさらされ続けて、水分を含んだ畳が変色しています。「雑巾で何度拭いてもすぐにカビだらけ。消臭剤も効果がない」
市にも苦情
Aさんが暮らす仮設住宅は、大手プレハブメーカーの大和リースが建設した被災地でもっとも一般的なもの。老朽化は特殊な例ではありません。
老朽化に拍車をかけている室内の結露や湿気も、大和リースなどプレハブメーカーはそろって「県の仕様の通り」「施工の瑕疵(かし)ではない」とします。
「そもそも長く住むことを想定していない建物。2年目になって、ガタがきているのは否めない」と話すのは、仮設住宅を管理する石巻市の担当者です。
仮設住宅の不具合などの訴えを受け付ける市のコールセンターには、被災者から「部屋にカビがはえた」「床がきしんできた」「床がたわんでぶかぶかしてきた」などの声が寄せられています。
市内では、床下からの湿気などで床板が腐った仮設住宅も。
市内の河川敷に建つ仮設住宅の1室を訪ねると、台所の床が手のひら四つ分ほどの範囲でぽっこりと盛り上がっています。
点検・補修を
床はベニヤ板にシートを張っただけの簡単なつくり。腐って膨張したベニヤ板が、シートを下から押し上げました。
指先でふくらんだ部分に少し力をかけただけで、腐ってもろくなったベニヤ板がピシッと音を立てました。
この部屋で3人の子どもを育てる40代女性は、「早く出たいが、移転先の造成が終わるまで家は建たない」。
冒頭のAさんも、「我慢して公営住宅の建設を待つしかない」と、やむなく劣悪な環境で暮らし続けます。
新しい住まいが確保できるまで、どうやって被災者の健康や安全を守るのか―。老朽化した仮設住宅の総点検や補修が、「これから被災地全体が直面する大問題」(石巻市の担当者)になっています。
仮設住宅 いまなお11万人
厚生労働省によると4月1日現在、11万582人が仮設住宅4万8102戸で避難生活を続けています。同省は仮設住宅の入居期限(原則2年)について、自治体の判断で(1)安全性の問題がない(2)住宅が不足―の2点を満たした場合には、更新(1回の更新は1年以内)を繰り返す形で延長できるとしています。
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