2013年4月9日(火)
保育所に入りたい!
認可保育所が望まれる訳は
保育研究所所長 村山祐一さんに聞く
大都市圏では、認可保育所に入れない待機児童の問題が深刻です。東京都や埼玉県などでは、親たちが集団で行政に対し異議申し立てを行い、マスコミも注目しました。認可保育所とは何か、なぜ認可保育所を望むのか、保育研究所所長の村山祐一さん(埼玉・みつまた保育園理事長)に聞きました。(仁田桃)
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認可保育所とは、子ども1人に対する面積や人員配置、施設の設備など国が定めた最低基準を満たしている保育所のことです。
社会的に位置づけられた認可保育所に入りたいという親たちの願いは当然で、わがままでも何でもありません。
基準充実の運動
現行の児童福祉法第24条に、市町村は保護者から入所の申し込みがあったときは子どもを保育所で保育しなければならない、とあります。この「保育所」というのは、認可保育所のことです。この法の趣旨からいえば、保育ママさんや認証保育所(東京都独自の制度)などの認可外保育所は、あくまでも補完の施設です。保育所不足に緊急に対応するためには、こうした施設の利用も必要ですが、抜本的には認可保育所の増設が欠かせません。
しかし、国の定めた最低基準は約60年前に決められたもので、必ずしも十分でないのも事実です。人員配置や遊戯室(ホール)の設置、年齢別の保育など、予算要求運動の積み重ねの中で補助金制度が一定改善されてきたので、こんにちの水準になっています。
規制緩和により、認可保育所においても園庭がなくても、近くに公園があれば良いとなりましたが、園庭があるとないとでは全く違います。
園庭は遊ぶためにありますが、「今日は雨だなぁ」とか「鳥が飛んでるな」とか自然を感じて、眺めるだけでも気分転換になります。
こうした園庭がなければ、8〜10時間も壁に囲まれたビルの一室で過ごすわけです。おとなでも気が滅入りそうです。人間にはゆとりが必要です。都心だから園庭をつくるのは難しいというのは言い訳です。廃校舎や国有地を開放すべきです。
安全面でも、園庭があれば、わざわざ道路を渡って公園に行く必要もありません。災害があったときにはパッと外に出ることができます。
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面積は人権問題
最低基準の面積のままでは狭くて保育ができないことも、これまでの歴史の中でわかってきました。ところが、認可外保育所ではさらに面積の規制が緩和され、子どものつめこみが起きています。
子ども1人当たりの面積の水準は外国に比べて狭い。それなのに規制緩和でさらに狭くするのは、子どもの人権を無視しています。おとなの都合、身勝手としかいえません。
2009年に全国社会福祉協議会が厚生労働省の委託で行った、施設整備に関する調査の報告によると、「少なくとも、寝るところと食べるところは分けて保障すべき」といっています。日本の保育所では「寝る、食べる、遊ぶ」を一つの部屋でやっています。諸外国は別々に確保されています。こんにちの状況に合わせた基準をつくるべきと提案したい。子どもは弱者だからこそ、最優先にすべきです。
また、認証保育所の場合は資格者は職員の6割でもよいという基準になっています。
もちろん、認可外の保育所などでも、一生懸命やっている良心的な事業者がいます。けれども、事業者の判断で設備や安全の配慮に幅がでてきてしまうのです。
待機児童の問題は10年ほど前からありました。東京都は「認証があるから」と、認可外で対応してきました。しかし、児童福祉法の趣旨から言えば、認可を増やすのが前提です。
地域での子育て
少子化なのに、なぜ待機児童が増えているのか。それは、働く人が増え、乳児期から入所する子どもが増えたからです。たとえば、今までは幼児が50人いたら、20人が乳児期から保育所に通う子どもでした。今は、乳児期から50人が入所して、そのまま幼児に上がっていきます。ですから、幼児と乳児の定員を最初から同じにするとか、新しい園舎をつくるなどの計画が必要になっています。
子育てできにくい地域になると活気がありませんね。私は、住居というのは、子どもや高齢者みんながいて、異年齢で交流できるような環境であるべきだと思います。
大きい保育所や、ビルの一室に保育所をただ増やせばよいというのではなく、子どもが見える地域づくりという観点で保育所を増やしてほしいです。
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