2013年4月5日(金)
鳥インフル 死者5人に
中国 感染拡大に懸念高まる
【北京=小林拓也】中国上海市で4日、H7N9型鳥インフルエンザの感染者が新たに3人(うち1人は死亡)確認されました。新華社電が伝えました。同インフルエンザ感染の死者はこれで5人。4日までに上海市、安徽省、江蘇省、浙江省で感染が確認され、全国に拡大する懸念が高まっています。感染経路がいまだに明らかになっておらず、インターネット上などでは不安や困惑の声が広がっています。
中国の国家衛生・計画出産委員会は3日、鳥インフルエンザ対策の応急措置を発表しました。国と地方が連携して、早期発見、早期治療で感染拡大防止に取り組むと強調。感染や症例などの情報については、公開・透明を原則とし、正確で迅速な発信をするよう各部門に求めました。
中国農業省は3日、H7N9型鳥インフルエンザのウイルスについて、動物の感染は確認されていないと発表。感染経路はまだ不明確で、さらに調査が必要としています。
中国当局によれば、3日時点で、人から人への感染は確認されていません。
ネット上では「(大気汚染の)スモッグを防ぐには窓を閉めろという。鳥インフルエンザ予防には窓を開けて換気しろという。一体どうしたらいいんだ」などの困惑の声も出ています。
3種ウイルスが遺伝子交換か
中国で死者や重症患者が相次いでいる新型鳥インフルエンザウイルス「H7N9型」は、これまで知られている3種類の鳥インフルエンザウイルスが再集合して生まれたと考えられることがわかりました。科学誌『ネイチャー』が電子版(2日付)で、中国や日本の研究機関の分析結果から判明したと報じました。
インフルエンザウイルスには8個の遺伝子が存在します。そのうちの2個は、ウイルスの表面にある二つのたんぱく質「ヘマグルチニン(H)」と「ノイラミニダーゼ(N)」をつくるもので、残りの6個は内部にあるたんぱく質をつくるものです。
中国の患者から採取したウイルスのゲノムの塩基配列を解読して調べた結果、ヘマグルチニンの遺伝子は中国などで最近見つかった鳥インフルエンザ「H9N2型」のものに、ノイラミニダーゼの遺伝子は韓国で2011年に、中国で2010年に見つかった鳥インフルエンザ「H11N9型」のものに似ていることなどがわかりました。研究者は、これらの結果をもとに3種類の鳥インフルエンザが同じ動物に感染して遺伝子を互いに交換しあうことで生まれた可能性が高いとみています。
国立感染症研究所の分析によると、新型鳥インフルエンザウイルス「H7N9型」は人間に感染しやすくなる変異を起こしていることがわかっています。『ネイチャー』の報道では新型鳥インフルエンザウイルス「H7N9型」のヘマグルチニンは構造的に鳥に深刻な病気を起こさないウイルスのものに似ているといいます。しかし、人間にはこの型のウイルスに対して免疫がないため、重度の病気を引き起こす可能性も否定できないとしています。