2013年4月4日(木)
被災地で地方公聴会
衆院予算委員会の地方公聴会が3日、福島県いわき市と仙台市で開かれました。
原発事故収束宣言撤回を
福島・いわき
いわき市での公聴会で、伊東達也・浜通り医療生協理事長は、福島原発事故は歴史上最大最悪の公害ともいうべき惨状をもたらし、住民は住める家も希望もない過酷な状況に置かれていると告発しました。事故の収束宣言を撤回し、福島県に残った原発を含めて10基すべてを廃炉にすることは県民の総意だと強調。損害賠償については請求権の消滅時効を適用除外にするよう求めました。
浪江町の馬場有町長は、同原発での長時間停止事故に言及。東電から役場担当者にメールが送られてきたほかは、「原因不明」だとする文書を1枚もってきただけだと説明。「電源にバックアップもない。こんなことをやっていて事故の収束などとんでもない」と批判しました。
渡辺敬夫いわき市長は、国の食品安全基準の問題について、地元食材の学校給食での活用が影響を受けている実態を告発。いわき商工会議所の小野栄重会頭は、県外からの観光客数が回復せず、農業・漁業も深刻な打撃を受け、地元農水産品が県外消費地に受け入れられない実態の改善を求めました。
日本共産党の宮本岳志議員は、原発事故の責任は「安全神話」を振りまいてきた東電と国にあると述べ、「事故収束という考えは根本的な間違いだ。収束宣言は撤回すべきではないか」と質問。馬場町長は「まさに収束していない。3月18日の(ネズミによる)電源トラブル一つみても明らかだ」として、一時帰宅も進むなかでのさらなる重大事故への危機感を表明。渡辺市長も「収束はしていない」と訴えました。
宮本氏は、事故原因も未解明で収束からほど遠い以上「全10基廃炉を求める声は当然ではないか」と質問。渡辺、馬場両氏はそれぞれ「もちろん10基廃炉だ」「当然のことだ」と答えました。
特区で沿岸漁業は崩壊
仙台
仙台市での公聴会では、宮城県漁協の菊地伸悦会長、石巻魚市場社長で石巻水産復興会議副代表の須能邦雄氏ら4人が意見陳述しました。
菊地県漁協会長は環太平洋連携協定(TPP)交渉参加について、「農業や漁業は食料だけでなく環境保全など多面的な役割がある。政府は食料自給率の上昇をもたらすための明確な政策を持ってもらいたい」と求めました。
仙台経済同友会代表幹事の大山健太郎・アイリスオーヤマ社長は宮城県の雇用状況について、仙台市を中心に求人率が1倍を超えるが建設業中心で「復旧が終わった瞬間に雇用がなくなってしまう」と語りました。
建築家の針生承一氏は、震災後に進められている高すぎる防潮堤建設問題に触れ、「防潮堤に頼るのではなく、自然環境を生かしたまちづくりが必要」とし、「今一度見直してほしい」と求めました。
村井嘉浩県知事が国に申請しようとしている水産業復興特区について委員から問われた須能氏は、漁業権を民間企業に開放することによって「地方の沿岸漁業が崩壊してしまうという懸念が払しょくされていない。無理押しするのではなく漁業者とよく話し合って『万機公論に決すべし』だ」と訴え、菊地県漁協会長も「安易に知事の権限を持って決め、全国に波及した場合は大きな混乱を生じる」と話しました。