2013年4月1日(月)
暴力「指導」根絶へ集い
“愛のムチ”などはありえない
自分で考える選手育ててこそ
スポーツ界から暴力を一掃し、人権尊重に依拠した指導の確立をめざすつどいが30日、東京都内で開かれました。元体育教員、スポーツ団体役員、研究者、弁護士らが呼びかけたもので、約50人が参加しました。
|
つどいではH・P・S(健康・体育・スポーツ)ネットワーク世話人の伊藤高弘さんがあいさつし、体育スポーツ関係者の横断的な取り組みは約40年ぶりであることを紹介。「改革のためのスタートにしたい」と話しました。その後、民間教育団体の代表や教員、スポーツ愛好者らが討論しました。
新日本スポーツ連盟の永井博会長は、「“愛のムチ”などありえない」と発言。暴力は人間性と人権を否定する犯罪だとする認識をスポーツ界で共有することが大切と強調しました。また、スポーツ基本計画で国がメダル獲得数を競技団体に押し付けてきた弊害を挙げ「監督や選手を追い込み暴力の温床になっている」と批判しました。
スポーツ法学会会員で弁護士の望月浩一郎さんは「暴力で強い選手は育てられない。自分で考える選手を育てることが一番大切なこと。勝利を目指すなら暴力指導はしない」と語りました。
和光中学教員の星野実さんは同校の実践を報告。授業第一で部活動は週3日に制限するなかでも、生徒は顧問の作ったビデオを毎日見るなど自分たちで工夫し、都大会で優勝できたといいます。「指導とは、相手をその気にさせること。ノーと言わせないのは管理であって暴力は指導ではない」といいました。
暴力問題に揺れる学校現場の実情も紹介されました。教育委員会の体罰調査に、「私は用紙を配れません」と拒否する担任や「何があっても体罰はないことにしますから、安心してください」と話す校長などの話に驚きの声があがりました。東京では、調査はするが結果について教員間で話し合うことはなく「それで根絶につながるのか」という疑問も出されました。
小学生からも「もっと先生が厳しくすべきだ。そうすればもっと締まる」と要望が出た話や、体罰を「最後の手段」と正当化する右翼的な月刊誌の特集、愛知では体罰で処分を受けた顧問の指導復帰を求める署名が4万人近く集まったことなど、体罰を容認する雰囲気が根深い事実も指摘されました。それに対して、スポーツでも、教育でも、暴力は許されないという姿勢が大切だと強調されました。
つどいには、日本共産党の宮本岳志衆院議員も出席し発言。最後にスポーツ界から暴力「指導」・体罰を根絶するために広く対話を進め、改革への共同を進めるよびかけを採択しました。
「基本法」を足場に容認の風潮断とう
宮本岳志衆院議員の発言
国会では体罰自殺問題について1月に集中審議をしました。そこで私は、スポーツ基本法に照らして訴えることができないかと考えて質問しました。教員を目指す学生を対象にした調査でも体罰は絶対ダメだという回答は半分しかいなかった例を紹介し、消極的でも体罰を容認する風潮を断ちきらないといけないと議論しました。文部科学相も「そのとおりだ」と答えました。
文科相は2月、「スポーツ指導における暴力根絶へ向けて」というメッセージを出しました。従来の学校教育法に基づく体罰禁止ではなく、基本法を根拠にしたところが画期的でした。みなさんの運動によって勝ち取った基本法を足場に暴力・体罰を根絶していく。こういう立場まで追い込んでいます。
スポーツ議員連盟は、日本スポーツ振興センター法を改正し、暴力問題の再発防止策として被害選手の相談窓口をセンターの業務として行うことを決めようとしています。センターのもとに第三者機関を置くのが本当によいのか疑問も出ています。慎重に検討すべきではないかと考えています。