2013年3月31日(日)
三菱電機など
GPS補完衛星受注
「安全保障」目的に1676億円
政府の準天頂衛星システム関連事業の受注先が三菱電機などに決定しました。内閣府が29日、発表しました。内訳は、衛星開発などを三菱電機が約503億円、地上設備の整備や約15年間のシステム運用をNECなどの設立した特別目的会社が約1173億円です。今回の政府調達は「国家の安全保障のため不可欠」としてWTO(世界貿易機関)政府調達協定の適用対象外にし、国内法人のみが対象の企画競争(随意契約の一種)で決定しました。
準天頂衛星システムは、米軍が運用するGPS(全地球測位システム)を補強・補完する衛星測位システム。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2010年に初号機を打ち上げ、実証実験を実施しています。今回、新たに3機を開発・打ち上げ、4機体制を整えます。
17年度末までに3機の打ち上げや地上システム整備を終え、18年度にも4機体制での運用を開始する予定。システム運用事業の契約期間は32年度末まで。
政府は、ミサイル精密誘導などに活用可能な同システムの開発・整備について、「日米協力の強化」や災害対応や軍事作戦を含む「安全保障」に資するとして、前のめりで推進。将来的には、米国のGPSなしでも日本周辺での測位が可能となる7機体制(総額2600億円規模)をめざすとしています。
解説
背景に米戦略と宇宙産業
GPSは市民生活に不可欠な存在となっていますが、ミサイルや無人軍用機の精密誘導にも使われています。
新たに導入する準天頂衛星システムは、妨害電波などの影響を回避するため、政府と政府が認めるユーザーだけが使用できる専用の暗号化信号も配信します。もし米軍に提供されたり共用されれば、米軍の戦争のためのインフラ整備となり、場合によっては憲法が禁じる集団的自衛権の行使につながるのではないかと心配されます。
日米両政府は、緊密な連携のもとで準天頂衛星システムを推進。日本政府は、宇宙の軍事利用を解禁する狙いで宇宙基本法が成立した後、同システム導入をめぐって安全保障面の利用の検討に公然と踏み出しました。2011年6月の日米安全保障協議委員会(2+2)では、測位衛星システムを含む宇宙の安全保障分野の協力について日米で確認しました。
一方、日本の宇宙産業界は、国際競争入札の例外となる「安全保障」分野を突破口に官需の増大をめざしています。(中村秀生)
準天頂衛星システム 地球を周回しながら1日のうち8時間ほど日本の上空にとどまる「準天頂軌道」と呼ばれる特殊な軌道に、衛星を3機以上配置することで、日本から常時1機以上の衛星がほぼ真上に見えます。建物の谷間のようなGPSのみでは測位できない電波の「死角」でも、準天頂衛星によって測位が可能になったり、測位精度が向上するなど、GPSを補強・補完します。