2013年3月31日(日)
ユダヤ人入植地問題
米大統領のイスラエル寄り
中東歴訪でくっきり
「過去の発言から後退」と批判
中東和平をめぐり、イスラエルがパレスチナ占領地で推進している入植地建設の是非が熱い焦点となるなか、オバマ米大統領は先の中東歴訪(20〜23日)でイスラエル寄りの姿勢を鮮明にしました。そこから浮き彫りになってきたことは何でしょうか。(カイロ=小泉大介 写真も)
パレスチナのマーン通信が23日に発表した世論調査結果によると、オバマ大統領の中東歴訪での言動がイスラエルの利益にかなったものだと見るパレスチナ人は94%に上りました。
オバマ大統領はアッバス・パレスチナ自治政府議長との会談で、「すべての問題が事前に解決されるのであれば、交渉の課題はなくなってしまう」などと発言。入植地建設の凍結が、2年半にわたり中断している和平交渉再開の前提だとするパレスチナ側の主張を明確に否定しました。
これは「前提条件なしの和平交渉の再開」を主張しながら入植地の建設を続けるイスラエル政府の立場を容認したに等しいものです。
パレスチナ・アルクッズ大学のザカリア・アルカク教授は「オバマ大統領は口では(イスラエルとパレスチナの)『2国家共存』が大事だといいますが、入植地の問題を先送りにしておいて、どうしてそれが実現可能だというのでしょうか。しかも過去の大統領自身の発言からも大幅に後退しているのだから話になりません」と指摘します。
現在52万人住居
イスラエルが1967年の第3次中東戦争で占領したヨルダン川西岸と東エルサレムで建設した入植地には、現在52万人(国連調査)ものユダヤ人が住んでいます。これはイスラエルのユダヤ人口の1割近くにあたります。
国連人権理事会の調査団は1月に発表した報告書で、入植地建設は自国民の占領地への移送を禁じたジュネーブ第4条約に違反すると告発。「イスラエルはすべての入植活動を無条件で停止し、全入植者の撤退プロセスを直ちに開始しなければならない」と強く求めました。「入植地凍結」というパレスチナ側の要求は、まさに最低限のものです。
オバマ大統領自身、そのことを十分理解しています。1期目当初、2009年6月にエジプトで行った演説では、「いまこそ入植地建設を中止すべき時だ」と力説しました。
決議案に拒否権
ところがオバマ政権は、11年2月の国連安全保障理事会で「入植地活動の停止」を求める決議案に対し拒否権を行使。昨年11月には、国連総会が採択したパレスチナ「国家」格上げ決議に反対したばかりか、決議案提出を阻止しようとまで企てました。
イスラエルでは18日に第3次ネタニヤフ政権が発足しましたが、入植地を担当するアリエル住宅相が「ヨルダン川と地中海の間にはイスラエルという国家だけが存在できる」と述べるなど、パレスチナ国家樹立を公然と否定しています。
米政権が入植地問題で現在の姿勢を続けるのであれば、「和平の公正な仲介者の役割など望むべくもない」(アルカク教授)ことは火を見るより明らかです。