2013年3月31日(日)
「保守の町」で共産党初議席
移住1年9カ月 住民の要望聞き解決 「こんな人おらんかった」
後援会報660世帯 手渡しでつながり
山形 真室川町議選
山形県真(まむろがわ)室川町(人口約9千人)に、日本共産党議員が初めて誕生しました。移住して1年9カ月の平野勝澄(まさずみ)さん(46)が24日投票の町議選(定数11)で662票を得て、2位当選。地元紙や他陣営の予想をくつがえした大量得票です。後援会ニュースを手渡しで配るなど、こつこつと積み上げた町民とのつながりが実を結びました。(本田祐典)
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県北端に位置する真室川町は、面積の7割を森林が占める豪雪地帯。過去に自民党衆院議員を2人生むなど、「保守の町」と言われる地域です。投票日直前の地元紙も、平野さんを候補者13人のうち12番目と予測しました。
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真室川町には党支部はありますが、町議選に候補者を擁立したことはありませんでした。町民の声を町政に届けるために労働組合の書記だった平野さんが山形市から移住し、初議席に挑戦しました。
なぜ、平野さんに大きな支持が集まったのか。まだ雪の残る町内を平野さんと一緒に歩いてみました。
「いいひと来てくれたやー。助かった」と声をかけてきたのは、障害を持つ家族と2人で暮らす女性(70)。平野さんを相談相手として頼っています。
朝の路上で急きょ、生活相談が始まりました。女性の話を丁寧にメモする平野さん。すぐに町役場に電話をかけて必要な手続きを確認していきます。
しだいに表情が和らぐ女性。「こんなふうに一緒に考えてくれる人は、おらんかった。平野さんが来て、違う町になったみたい」
平野さんは移住後、この女性をはじめとする町民らに後援会ニュースを手渡しで配り、同時に町民の声をつぶさに聞いてきました。
「知らない家に入っていくのが怖くてくじけそうになったときもあったが、頑張ってよかった」と平野さん。
後援会ニュースの読者は、今では660世帯に。町内世帯の約4分の1にあたります。
要望を聞き、行政に届け、一緒に解決する―。こうした姿勢は町民の間で話題になっています。当選翌日、40代女性から届いた手紙はつづります。「話を聞いてもらえて涙が出るほどうれしかった。希望の光です」
訪問した真室川町農協では、参事が、「いやー、票とったなあ」と町民の変化に対する驚きを口にしました。
「TPP問題では共産党と党派を超えた共同が必要だ。産業が特にない町で、農業だけは守りたい。町の将来のために平野さんに頑張ってほしい」
福祉灯油実現が話題 吹雪つき連日つじ立ち
「町を揺るがしたなあ。みんな変化を望んでいるんだ。当選は偶然じゃないよ」
町内で商店を営む男性(75)は、満面の笑みで喜びます。平野さんが手渡しで配る後援会ニュースの読者として、活動を見守ってきました。
後援会ニュースは、平野さん、日本共産党と有権者を結ぶ絆です。
地縁も血縁もなかった平野さんは移住後、町内を一軒ずつ訪ねて、「町のために活動しています。ニュースを読んでください」と訴えました。
読者数は2012年6月の70世帯から、同8月173世帯↓同12月477世帯↓13年3月660世帯―と増え続けています。「この読者たちが選挙勝利を支えた」と、選対責任者の矢口廣義さん(党山形県最北地区委員長)はいいます。読者のほとんどは、これまで日本共産党以外の政党に投票してきた人たちです。
「職場でもあなたが話題になっているよ」と平野さんに握手を求めた女性(55)は、国政選挙では自民党に投票してきました。
女性は同行した太田としお参院山形選挙区予定候補とも、TPP(環太平洋連携協定)の参加阻止で意気投合し、「自民党には、お灸(きゅう)が必要。参院選は共産党にするからね」と心境の変化を語ります。
女性がとくに感心したのが、平野さんが町民の声を届けて実現した「福祉灯油」です。「おかげで助かったという話を職場で聞いた」といいます。
福祉灯油は、平野さんが今年2月に町に要請。2週間後、町が実施すると回答し、低所得の高齢者など388世帯に5千円分の灯油券が届いたのです。
さらに行く先々で評判なのが、平野さんが2月に始めた早朝連日のつじ立ちです。
猛吹雪のなか、町外に働きに出る車600台に手を振り続けた姿に、「この人は真剣だ。町を変えてくれるかも」と急速に共感が広がりました。
党真室川支部の斉藤壮一さん(65)は、「我慢して目に見えなかった町民の要求が、平野さんの活動で表面化した」と語ります。
自身も初めて自分のつながりに声をかけ、知人や友人など30人を平野さんに紹介。選挙で50人の支持を集めました。「最初は勇気がいったが、訴えてみると反応がよかったなあ」
支部では、参院選に向けて、地域との結びつきをさらに強めようと取り組みます。
記者が同行した日も、平野さんは、斉藤さんの案内で町民が自力で除雪する地域を訪ねました。
高さ4メートルに積み上げられた雪の壁を前に、脳梗塞でまひする手で雪を懸命に捨てていた男性(77)は、「車も通れない。消火栓も埋まる。助けてくれ」と訴えました。
近隣に空き家が増えて8世帯から4世帯に半減し除雪が困難になっているといいます。
高齢化や産業の縮小など、どんどん苦しくなる町民の生活―。平野さんはいいます。「町民の願いを国政とつないで実現するためにも、もっと共産党を大きくしたい」