2013年3月30日(土)
家政婦・料理人・門番・子守も…
同等の働く権利 手に
ブラジル 憲法修正案が成立
ブラジル国会は、家政婦や門番など家事労働者の権利を抜本的に向上させる憲法修正案を下院に続き上院で可決し成立させました。不当解雇禁止や有休取得を含め、家事労働者に一般労働者と同等の権利が全面的に認められるのは同国史上初めてのことです。(菅原啓)
残業手当や有休認める
ブラジルでは憲法第7条で労働者の権利が詳細に規定されています。2003年以来続く労働党政権はこれまでも家事労働者の権利向上のためさまざまな施策を取ってきました。今回、ルセフ政権は全面的な待遇改善のために憲法修正に踏み切りました。
修正案は当初、雇い主側への負担増を懸念する反対論にも直面しましたが、26日の上院での採択では全会一致で可決されました。4月2日にルセフ大統領が署名して公布される予定です。
家事労働者として分類されるのは、家政婦、料理人、門番、子守、運転手、庭師など一般家庭で働くほとんどの職種。雇い主の権限が強く不当な扱いを受けることが多々あります。憲法修正によって、有休や傷病休暇、失業手当が新たに認められます。
労働時間の上限(1日8時間、週44時間)が適用され、これを超える場合には残業手当(賃金の5割増)を受け取ることができます。正当な理由のない恣意(しい)的な解雇は禁止。労働組合加入や団体交渉の権利も保障されます。
労働組合の推計によると、ブラジルの家事労働者は約910万人。うち94%が女性で、さらにその84%は黒人女性で占められています。
現地からの報道によると、政府代表として採択に立ち会ったメニクッチ女性政策庁長官は、家事労働に従事する「女性たちの(職の)安定を保障するものだ」と憲法修正の意義を強調。外国メディアは「修正によって、何百万人という女性、とくに黒人女性が奴隷に近い労働システムから脱出できるだろう」と報じました。
女性家事労働者全国連合(FENATRAD)は、一般労働者と同等の権利を保障したことを「歴史的な不公正を償うものだ」と歓迎の声明を発表しています。