2013年3月29日(金)
保育所入れず異議 自治体の対応に批判
審査せず却下の例も
父母“声を受けとめて”
認可保育所に子どもが入れない親たちが、行政不服審査法にもとづく異議申し立てや審査請求を各地でおこなっています。ところが、申し立てに対して不十分な対応をする自治体もあり、批判を浴びています。 (堤由紀子)
異議申し立てや審査請求は、行政不服審査法にもとづく手続きです。同法第1条にはその目的として、「国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くことによって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保する」とあります。
入所申し込みに対する不承諾通知には、同法にもとづき、受け取った日の翌日から60日以内であれば申し立てや審査請求ができると書かれています。
申立書や審査請求書が提出された場合は、内容を審査して結果を通知しなければなりません。ところが、2度にわたり集団で異議申し立てを受けた東京都杉並区の「通知」には、申し立てができるとの文面がなく、申立書を一度は受け取ったにもかかわらず、審査もせず却下しました。
同区では2月22日、第1次選考で内定が出なかった親たちが集団で申し立てをおこない、68人分の申立書を区に提出しました。しかし区は、審理にも入らないまま申し立てを却下しました。
3月15日に第2次選考結果通知が届いたのを受け、21日には42人分の異議申立書を区に出しました。これについても同区は「対応は前回と同様にさせていただく」とのべ、「却下」する予定だと同日明らかにしました。
同区保育課によれば、これらはあくまでも選考結果通知であり、これから届く予定の「不承諾通知」で初めて異議申し立てができるとしています。
集団での異議申し立てをしてきた「保育園ふやし隊@杉並」代表の曽山恵理子さんは「今申し立てをするぐらい困っている人たちだけでも救済してほしい、との気持ちからの行動なんです。不承諾通知が届くのが遅すぎる。せめて2次選考通知は不承諾通知にしてほしい」と言います。
別の区では、申立書がなかなか受理されませんでした。
0歳の息子が認可保育所に入れなかった伊藤沙織さん(34)=仮名=は、14日に異議申し立てをしました。ところが区は、「これを出しても入所できるわけではない」と受理を拒んで説得にあたり、1時間ほどのやりとりの後にやっと受理しました。「申し立ては私たちの大切な権利。区はちゃんと私たちの声を受け止めてほしい」と話しています。
明らかな権利の侵害
保育問題にとりくむ大井琢弁護士の話 杉並区のやり方は、特殊といえます。同区は最終的には「不承諾通知」を出すとしていますが、そもそも4月入所の承諾・不承諾の処分について、4月にしか正式な処分や通知がなされないというのは遅すぎます。
また、2、3月の不承諾「予定」の通知を出した時点で、審査はいったん終了しており、不承諾がほぼ確定しているので、その時点で処分があると解しても問題はなく、処分が存在しないと言い張るのはおかしなことです。正式な通知がこない人もおり、どの時点で処分が存在するかもわからないことになり、これもおかしなことになります。
伊藤さんに対する区の対応は、明らかに不服申し立ての権利の侵害であり、あってはならない対応です。