2013年3月29日(金)

きょうの潮流

　取材先にむかうため渋谷駅で乗り換えました。まあ、わかりづらいこと。昔からあった私鉄の駅が地上２階から地下５階へ。ぐるぐると歩かされ、電車に乗るまでひと苦労です▼ＪＲのほかに六つの私鉄線が入り乱れる拠点。ただでさえ複雑なのに慣れない移動にとまどう人は多い。エレベーターの場所がわからず、お年寄りやベビーカーの母親は困り顔。駅員や係員は迷う人たちの対応で大わらわです▼旧駅の跡地はさっそく催し場に変身。いまは色とりどりのＴシャツが占領しています。混乱状態がつづいているのに、これ以上、人を増やさなくてもいいのに。たくましい商魂の陰で安全が置き去りにされていないか▼定着していた駅の移動には、新しい商業ビルへの客寄せと、私鉄間の相互乗り入れによる集客効果の期待があります。通勤・通学をはじめ便利になった面はありますが、都市部で加速する高齢化にやさしいとはいえないでしょう▼地下化は危険をともないます。火災や水害に弱く、避難先の確保も課題。阪神・淡路大震災のときには地殻変動で押しつぶれた地下鉄の駅も。ＪＲ西のように、大勢を運ぶ鉄道を利益優先で運営すれば大惨事をまねきかねません▼便利さといえば、ＩＣ乗車カードの全国使用もそう。しかし１枚のカードが万能になるほど、個人情報は危うい。それを国が管理・利用する共通番号制度は情報漏えいとプライバシー侵害のさいたるものです。利便性の裏にある大事なものを見失ってはならないでしょう。