2013年3月22日(金)
主張
福島第1原発停電
事故収束など問題にもならぬ
2年余り前の東日本大震災の際、炉心が溶融(メルトダウン)し放射性物質が外部に拡散する大事故を起こした東京電力福島第1原発で、使用済み核燃料の貯蔵プールの冷却システムなどが停電によって停止するトラブルが起きました。使用済み核燃料は崩壊熱を出し続けており、長時間にわたって冷却できなければ、燃料が溶け出し放射性物質を拡散させるなど、重大事態の発生も懸念されます。停電は復旧しましたが詳細な原因は不明で、ネズミなど小動物の感電で起きたともみられています。原発事故の「収束」など問題にもならない実態です。
屋外に仮設の配電盤
それにしても、停電事故の原因になったとみられる配電盤が、2年前の事故直後から屋外に置かれたトラックの荷台に仮設されたままで、ネズミなど小動物が出入りできる状態だったとは驚きです。停電に備えたバックアップの体制もありませんでした。
東日本大震災の際、福島第1原発では外部からの電源が途絶え、非常用の発電機も機能しなくなって、原子炉などの冷却ができなくなりました。今回停電したのは、その後設置された1、3、4号機と共用の、使用済み核燃料貯蔵プールなどを冷却していたシステムの回路です。原子炉を冷却する回路は停電しなかったといいます。
いずれも外部から引き込んだ電源を、1号機のプール用と、3、4号機のプールと共用プール用などに分けて、配電していたといいます。このうち3、4号機などに配電した回路の途中の配電盤のひとつに小動物が入り込んでショートしたとみられています。1号機用の回路は別系統ですが、工事の都合で回路をつないでいたため、停電が1号機にも広がりました。
使用済み核燃料を大量に貯蔵しているプールが冷却できなくなれば、重大な事態が発生することは事故直後から指摘されてきたことです。とくに事故当時、定期点検中で大量の燃料がプールに貯蔵されていた4号機は、外部からの注水までおこなったほどです。現在はプールの水を循環させて冷却していますが、万一そのシステムが停止すれば重大な事態の発生も懸念されるのに、事故直後の仮設の設備をそのままで、停電対策もなく使い続けたのは大問題です。
今回の停電では、復旧するまでに、もっとも大量の使用済み核燃料が貯蔵されていた4号機のプールは6度水温が上昇しています。時間がもっとかかれば、燃料棒の破損もありえました。停電発生からすべて回復するまでには29時間もかかっています。核燃料がメルトダウンし、炉心が破壊したとみられる1〜3号機では放射線量が高くて近づくこともできないことに加え、福島原発の実態が「収束」とは程遠いのは明らかです。
収束急ぎ、廃炉実現を
東京電力の報道機関への連絡が停電発生から3時間後、東電の記者会見が半日以上あとの翌朝になったのは見過ごせません。原因の究明よりも仮復旧を急いだのも問題です。東京電力が、周辺住民の安全より、トラブルの隠ぺいを急いだ疑いもぬぐいきれません。
東電に対応を任せた規制委の姿勢も問題です。事故を起こした東電をきびしく監督し一日も早い収束と、廃炉を確実に実行していくことこそ政府・規制委の責任です。