2013年3月17日(日)
シリア反政権デモ開始から2年
死者7万人超 内外避難民300万人
「人道上の悲劇」続く
政治的解決求める声強く
シリアでアサド独裁政権に異議を唱える最初の全国デモが発生して15日で2年が経ちました。その後、同国はなぜ泥沼の内戦状態に陥ったのか、それは国民にいかなる被害をもたらしているのか、内戦の終結に向け、どのような道が残されているのか、あらためて見てみました。(カイロ=小泉大介)
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死者総数7万人超、国外避難民100万人以上、国内避難民200万人以上、人道支援が必要な国民は400万人――。
いずれも国連が発表したシリア内戦の被害の最新状況ですが、人口2000万余の国で300万人以上が故郷を追われている事態はまさに「人道上の悲劇」としかいいようがないものです。
政府軍側は強硬
「政府軍は不正義と抑圧に抗議する国民の平和的なデモに向けて容赦ない攻撃を行い、住民虐殺の罪を繰り返してきました。私も親類を10人以上失いました。正当な要求を力で押さえ込む政権に対し、反体制派が武力で抵抗することは当然です。内戦をもたらした責任がアサド政権にあることは疑いありません」
北部アレッポから隣国トルコに家族とともに避難している男性、ジアド・アリさん(37)は本紙の取材に対しこう憤りました。
当初は政府軍が軍事的に圧倒的に勝っていましたが、現在ではアレッポの一部や、イドリブ、ラッカなど北部の主要都市を反体制派が掌握、首都ダマスカスを攻略する情勢となっています。
ただ、アサド大統領はいまも「祖国を離れて暮らすことを考える愛国者はいない」と辞任を拒絶。政府系紙アルワタン13日付が「政府軍は数年間は戦える兵力と兵器を有している」とするなど一歩も引かぬ構えで、犠牲者は日々、拡大をつづけています。
情勢悪化の要因として、欧米やアラブなど「シリアの友人」諸国が反体制派支援を鮮明にしているのに対し、ロシアやイランはアサド政権の“後ろ盾”の立場を崩さず、国際社会が効果的で一致した対策を示せていないことも指摘されています。
反体制派対立も
このような状況下で注目されるのが「シリアの友人」諸国が「シリア国民の唯一正当な代表」と認める反体制派統一組織「国民連合」の動向です。アラブ連盟は今月6日、同連合が暫定政府の体制を整え次第、連盟における代表資格を付与する意向を表明しました。
しかし、「国民連合」は、当初、2日に暫定政府閣僚を決定するとしていた予定を延期したままです。同連合をめぐっては、イスラム主義勢力と世俗・リベラル勢力との対立、さらには在外勢力と国内勢力との対立などが従来から指摘されてきましたが、反体制派の不団結がアサド政権の強硬姿勢を可能にしていることも否めません。
軍事的攻防が最も激しい地域の一つ、中西部ホムスにとどまり負傷者救援にあたっている男性医師のタリク・アロロさん(27)は「反体制派諸組織がそれぞれのエゴを捨て、国民の利益に沿って統一することが状況打開にとって不可欠です」と強調。「そのうえで、国民弾圧に直接関与していない政権代表と反体制派が対話することが大事です。軍事的対決は流血をもたらすだけです」といいました。
国連とアラブ連盟の合同シリア特別代表であるブラヒミ氏も12日、「シリア危機は世界で最も深刻だ」「政治的、平和的、そして合意にもとづく解決策によってのみ、危機は打開できる」と力説しました。