2013年3月16日(土)
国民を欺く二枚舌
TPP交渉参加表明
「撤回」するしかない
安倍晋三首相は15日の記者会見で環太平洋連携協定(TPP)の交渉に参加することを表明しました。自民党は昨年末の総選挙でTPPの交渉参加反対を掲げており、参加表明は公約違反以外の何ものでもありません。
「ウソをつかない。TPP断固反対。ブレない。」。自民党が総選挙で張り出したポスターの文言です。政権公約では「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対する」としました。総選挙で当選議員の7割にあたる205人もの自民党議員がTPP参加に「反対」を表明しました。首相の参加表明は国民への裏切りにほかなりません。
「オバマ大統領と直接会談し、TPPは聖域なき関税撤廃を前提としないことを確認した」。安倍首相は記者会見で強調しました。これはTPPに関する日米共同声明で「交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」との文言が盛り込まれたことを根拠にしています。
崩れた根拠
しかし、共同声明はまず、「交渉に参加する場合には、全ての物品が交渉の対象とされる」としています。さらに、関税や非関税障壁を撤廃するとした「TPPの輪郭」で示された「包括的で高い水準の協定を達成していく」との文言も共同声明に明記されました。
安倍首相が、「聖域なき関税撤廃」が前提ではないとする根拠とした共同声明の文言は、交渉のなかで「例外」を主張することまでは禁止していないことを述べただけです。関税撤廃の「例外」が認められる保障ではありません。その点については日本共産党の質問に安倍首相も「(交渉の)入り口で除外するという担保は共同声明にない」と認めました。
アメリカに対しては「聖域なき関税撤廃」を誓約し、国内には「関税撤廃」が前提ではないと説明する二枚舌は国民を愚弄(ぐろう)しています。
党ぐるみで
にもかかわらず、自民党が13日に採択した「TPP対策に関する決議」では、日米共同声明を「日本外交の成果」などとし、安倍首相に「高い見地から判断願いたい」と丸投げしました。わずかに、「聖域」とする「重要5品目等」や「国民皆保険」が確保できない場合は「脱退も辞さない」との文言が決議に入れられましたが、TPPは対等な交渉権さえ与えられないことが明らかになっており、何の保証にもなりません。
安倍首相だけでなく、自民党丸ごと国民を欺く公約違反に踏み切ったといわなければなりません。
安倍首相は記者会見で「すでに合意されたルールがあれば、遅れて参加した日本がそれをひっくり返すことが難しいのは厳然たる事実だ」と認めました。「交渉力を駆使し、守るべきものは守り、攻めるものは攻める」としていますが、「守るべきものは守る」ためには、いまからでも交渉参加表明は撤回するしかありません。(藤川良太)