2013年3月15日(金)
自衛隊員の思想・交友調査
防衛省資料を本紙入手 人権を侵害・違憲
公務員「秘密取扱者制度」
国が持つ「秘密」を扱う職員を選別する「秘密取扱者適格性確認制度」をめぐり、職員が加入する政治や宗教、趣味の団体、交友関係など、あらゆる個人情報を申告させている疑いがあることが14日、防衛省の内部資料で判明しました。同制度では国の行政機関が少なくとも6万4000人超の国家公務員に身辺調査を行っていたことが明らかになっています(14日付既報)。思想信条の自由を侵す憲法違反の調査であり、家族や友人など広範な人のプライバシーも知らぬ間に侵害する危険なものです。
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本紙が入手したのは、防衛省・自衛隊が適格性を確認するため、調査対象の自衛隊員に記入させる「身上明細書」と、記入要領を示したマニュアルです。
「身上明細書」には、19項目にわたって個人情報を記入する欄があります。本人だけでなく親族や同居人、友人、外国人交友者の名前や性別、住所、職業、勤務先などを詳細に書き込むようになっています。
マニュアルには「記入に際しては、本人に問い合わせて確認してはならない」としており、自衛隊と関係ない市民の個人情報が無断で防衛省にわたっていることになります。
さらに「身上明細書」には、宗教などの所属団体名や目的、所属期間を記入するよう求めた欄まであります。マニュアルでは「政治、経済等の団体及び出身学校関係の親睦団体からスポーツクラブその他あらゆるものについて、現在過去を問わず記入する」よう指示しています。
関係者によると、この「身上明細書」をもとに、自衛隊情報保全隊が身辺調査を行い、正確に記入しているかどうかを確認しているといいます。
今回判明した「身上明細書」には、注意書きとして「適格性の確認のために必要な範囲で使用」すると明記。同様の調査が全省庁で行われているとみられます。防衛省は、本紙の取材に対し「適格性確認制度について必要な事項を定め実施している。しかしながら指摘の点については、同制度の具体的運用にかかわることであり、答えを差し控えたい」としています。
あらゆる個人情報 記入
友人や家族の情報から信仰や趣味のつながりまで、過去・現在を問わず国家公務員のあらゆる個人情報を調べあげる「秘密取扱者適格性確認制度」。その内容は、これまで隠されてきましたが、今回入手した防衛省の内部資料によって、その危険な内容が明らかになりました。
「所属団体」「外国人交友者」…
プライバシー侵害 国民監視の危険
「関係は『高校時代の同級生』、『釣りクラブの仲間』のように記入する」
「身上明細書」の書き方を記したマニュアルは、こと細かに記載方法を記していました。
付き合いの程度についても「家族ぐるみ」「帰省時に会う程度」「交際中の異性」など、六つの選択肢から答えなければいけません。
所属した団体については「あらゆるものについて、現在過去を問わず記入する」という調査の徹底ぶりです。質問項目(表)で明らかなように、まさに「思想調査」そのものです。
さらに「身上明細書」には「私の出入国記録を法務省出入国管理局に照会することに同意します」という記述と署名欄もあり、防衛省が第三者に問い合わせていることも明らかになりました。
「秘密取扱者適格性確認制度」では、国の行政機関23で6万4380人(昨年末時点)の「適格者」がいます。その中で防衛省は、6万480人を占めます。
マニュアルでは「本人に問い合わせて確認してはならない」と指示。「身上明細書」に無断で名前を書かれた友人や親族、団体を含めると、すでに国民規模で国によるプライバシー侵害が進んでいることになります。
制度の中身をめぐっては、これまで日本共産党の塩川鉄也衆院議員が開示を要求したものの、政府は公表を拒んできました。
今回入手した資料で明らかになった同制度の危険性。自民党安倍内閣は、民間人も身辺調査の対象とする「秘密保全法案」の提出を狙っています。今国会に提出中の「国民共通番号(マイナンバー)法案」とあわせて、国による危険な国民監視の動きです。
「身上明細書」の主な記入項目
◆帰化の有無
◆配偶者(婚約者、内縁にあるものを含む)の国籍、勤務先、職務内容、帰化の有無
◆親族、同居人の国籍、勤務先、住所
◆交友関係、外国人交友者の名前、住所、職業・勤務先、関係・交際程度
◆負債金額と借り入れ目的、返済月額、完済予定日
◆所属団体(クラブ、連名、運動、宗教、趣味等)の所在地、目的、所属期間
◆刑事処分の有無
◆アルコール、薬物濫用、精神面を原因とする治療またはカウンセリングの有無
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